クライアントを無視して代理店本位のビジネス追求
●インセンティブがもらえる媒体を代理店は好んで売る
手数料率に差があるという事情のほかに、ある広告を売るとその媒体を持っている会社からインセンティブが出ることがあります。たとえば月500万円以上売れば25万円をキックバックするといった条件で、インセンティブは丸々利益になりますから、なんとか売上500万円を達成しようとします。広告を出した結果はパッとしない媒体でも優先して出稿し、インセンティブがない媒体を後回しにします。
代表的なところではヤフーに出稿すると、代理店にこのようなキックバックがあります。私が広告代理店の下請けをしていたときのことですが、代理店の社内で、この媒体はインセンティブが付いてマージンもいいから、とにかくこれがいいと言って売ってくるようにと、朝礼で上司が営業担当に指示する場面にも遭遇しました。
もっと言えば、人間ですからある媒体の人と仲がよければ、そっちから売ってあげようという心理が働いても不思議ではありません。いずれにしても、代理店の都合で売りたがるものがあるということは知っておいた方がいいと思います。
クライアントの方を向かずに代理店本意になると、自分たちにとって都合のいい媒体を売りつけるという売上の立て方をしてしまいます。すると売りつけられる方は、なにかピンと来ないがやたらに推してくるという印象を持つはずです。そんなときは裏に代理店の事情があります。効果がないものを押しつけられて無駄に出費をしないよう注意しなければなりません。
●数字までごまかしてしまう詐欺的手口
実際の数字を隠しているのだからどうせ分からないだろうと、数字の書き替えにとどまらずに水増しまですることもあります。獲得目標が 10 件のところ、実際は8件しか問い合わせがなかった場合、2件水増しして目標を達成したと報告するのです。
問い合わせが8件しかなかったのはクライアントも知っていますから、さすがに隠せないのではないかと思うところですが、数多くの媒体に広告を出していたり、複数のプロモーションが並行して進んでいると、クライアントも個々の正確な件数までは把握できません。
またサイトAとサイトBの広告の両方を見て問い合わせがあった場合、どちらにカウントしても間違いとはいえません。それを両方にカウントするといった若干の水増しだと、なかなか分かりません。どうも数が合わないと言われたら、いろいろやっているので重複がある可能性があるが、少なくともこの媒体ではこれぐらい取れていると言い張って乗り切ろうとします。
しかし現実の数字があまりにひどくて、契約を切られないようにと無理な水増しをした結果、売上が少ないのになぜこんなに数字がいいのかと不正が発覚し、過去の水増し分まですべて精算することになった例もあります。
後藤 晴伸
後藤ブランド 社長