理想の経営を目指すためには余裕を持った資金が必要である。さらには、会社を育てていくために、本業とは別にもう一つの定期的な収入源があれば、少なくとも生活していく分には安心だろう。「真面目で一生懸命頑張っている経営者」こそ不動産投資の恩恵は十分に受けられる――自身も投資家である曽我 ゆみこ氏はそう語る。経営者に特化した初心者のための不動産投資のポイントをわかりやすく解説する。本連載は、曽我氏の著書『経営者のための初めての不動産投資戦略』(プレジデント社)から一部を抜粋した原稿です。

仕事の忙しさで操り人形に…もっと効率よく稼ぎたい

【個人事業主・Bさんの事例 ~どうやって私は優良物件に出会ったか~】

 

2020年現在、2棟のアパートを所有しているのが、個人事業主として働くBさんです。不動産投資を始めたきっかけは、本業の仕事に波があったこと、そして子どものためでした。

 

「夫は正社員として働いていますが、年収は500万円ほどです。もともと夫婦ともに地方出身なので、自宅にかかる固定費が家計を圧迫していました。生まれてきた子どもに思う存分の教育費をかけてあげたいという思いもあって、子育てをしながら個人事業主として働くという選択を取っていました」

 

個人事業主としての年商は200万円程度でしたが、仕事には波があり、忙しいときには家事もままならなくなり、夫婦で衝突してしまうこともあったようです。

 

「もっと効率よく働かないといけないと思いました。でも、仕事の量を自分でコントロールしていくほどの余裕がなく、クライアントからくる依頼のままに、操り人形のような働き方をしていたので、生活サイクルを変えることはなかなかできませんでした」

 

そうしたなか、Bさんは考え方を変えました。副業として不動産投資を行い、安定したお金が入ってくるようにすれば、本業のほうも自分で仕事を選ぶことができ、効率のいい働き方ができるのではないか、と思ったのです。そのために、Wゲインシートを用いながら、インターネットで物件情報をチェックしましたが、なかなか「これだ」というものとは出合えませんでした。

 

そこで大学時代に馴染みのあった駅に行き、地元の小さな不動産販売会社を訪ねました。そこで自分の条件を伝え、「近くでよい物件が出てきたら、紹介してほしい」と話したといいます。

 

その結果、2017年にBさんは、その小さな不動産販売会社が紹介してきた10戸のアパートを約1億円で購入しました。その物件が、事前にWゲインシートでシミュレーションしたとおり、初年度からきちんとキャッシュフローが残ったことから、翌年、同じ不動産販売会社から別の物件紹介があったときに、二つ返事で購入することができました。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

「相場感を知るために、街でもインターネットでも、ずっと不動産情報にかじりついていましたね。だから、Wゲインシートを使って、何度もシミュレーションしていたので、ちょっと数字を聞いただけで、可能性がある物件かどうかがわかる状態になっていました」

 

もちろん、Bさんは不動産投資をするのは初めてでしたから、「心配事もたくさんあった」と振り返ります。

 

「1棟目は学生向けアパートで10月引き渡しだったので、実際に住み始める翌年4月までの間にすべての部屋の居住者が決まるかと、家賃が入ってくる前に利息の支払いがかさむことが気がかりでした。その旨を銀行に伝えたところ、3月までは利息分だけの支払いにしていただき、4月からは家賃が入ってから支払えることになりました」

定期清掃でクリーンな物件を保ち、現在満室稼働中

現在は、無事に満室稼働中だということです。また、かなり古いアパートだった2棟目も、入居者が留まってくれるだろうかと心配だったそうです。さらに、ゴミ置き場などの管理が不十分だったこともあり、雑草が縦横無尽に生えている状態で、物件を綺麗に保てるのか不安だったと言います。

 

「購入時に見に行ったときは、ゴミ置き場にゴミがたまったり、敷地内に雑草が生えていたりもしていたので、管理業者と連絡を取り合い、定期清掃をお願いすることにしました。すると、共用部分は問題なく綺麗に保たれるようになりました。もちろん定期清掃をすることで経費はかかりますが、そのぶんを家賃に転嫁させました。この金額だと空室が増えるかもしれないという懸念はあったものの、問題なく住み続けてくれているので、結果的に良かったと思っています」

 

本業はどうなったのでしょうか。最も大きかったことは、やりたい仕事を選べるようになったことと、Bさんは言います。

 

「初めの一棟を購入するのには、本当にうまくいくのか勇気がいりました。でも、それまでとは異なり、不動産投資で定期収入が入るようになってからは、お金のためではなく、やりたいことに特化して働くことができるようになりました。もしかしたら、そうやって仕事を選り好みしていると、収入が減るのではないかと心配もしていました」

 

実際には、仕事の件数は減ったものの、単価が上がったので年商が減ることもありませんでした。むしろ年商は増え、自分で仕事の量と内容をコントロールできるため、仕事の波も減り、いいこと尽(ず)くめだったそうです。

 

「好きなことをやってそれがお金になるという、とてもよいサイクルに入れたと思います。お金的にも余裕が生まれましたし、精神的にもすごく安定しています」

 

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経営者のための初めての不動産投資戦略

経営者のための初めての不動産投資戦略

曽我 ゆみこ

プレジデント社

働けなくなったとしても生活していけるだけの毎月の十分なキャッシュフローをつくる(当面のお金の心配をせずに本業に専念できる)。会社をたたんだ時に、法人、個人全ての借入が清算(返済)できるだけの純資産をつくる。毎月のキ…

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