「大病院でもない限り、税務調査とは無関係だろう」――この考えはまったくの誤解です。個人経営のクリニックに対しても税務調査は行われます。クリニックに対する税務調査の実態を説明します。*本記事は、佐野明彦氏の著作『妻に隠しごとがあるオーナー社長の相続対策』(幻冬舎MC)から抜粋、再編集したものです。

強制調査は国税局査察部―通称「マルサ」―が悪質な脱税事案について、裁判所の発した令状に基づいて強制的に証拠物件や書類を押収して行う調査です。

 

一方、任意調査は所轄税務署が適正な課税処分のため必要に応じて申告内容について実施する調査です。質問検査権が行使された場合には、質問等に応じない者に対して罰則が課されることもありますが、基本的には納税者の同意のもとに行われます。

「強制捜査」は自由診療割合の高い科目に多い

クリニックに対して行われる税務調査は、通常はこの任意調査です。任意調査は予告調査なので事前に必要な資料については万全の準備を行い、調査に臨むことが必要です。また調査時の対応においても、故意に調査官を待たせたり、資料の提供を拒否したりすることは賢明ではありません。関与税理士立ち会いのもとでスムーズに調査が行われるように協力することが大切です。誠意は伝わるものです。こうして調査に臨むことで円滑に調査が終了するのです。

 

しかしながら少なからず強制調査も行われています。産婦人科や美容外科、矯正歯科などの自由診療割合の高い診療科目に見受けられます。内部告発によるケースも多いといえます。

 

幸いに筆者の事務所関与先においてはこれまで一回もありませんが、世間一般的に強制調査も行われていることに留意してください。

 

 

髙田 一毅

みなとみらい税理士法人 髙田会計事務所 所長 税理士

 

本連載は、2016年9月27日刊行の書籍『クリニック税務調査読本』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

クリニック税務調査読本

クリニック税務調査読本

髙田 一毅

幻冬舎メディアコンサルティング

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