ちなみに脱税事犯で起訴された場合、有罪率は100%といわれています。国税庁の資料によれば、平成27年度中に一審判決が言い渡された案件は133件で、そのすべてが有罪となっています。そのうち2人が実刑判決を受けています。1人は懲役6年、もう1人は懲役2年でした。
万が一、ドクターが実刑判決を受けることにでもなろうものなら、前述した免許取り消しの処分を受ける可能性が大きくなります。
さらに、新聞などで大々的に報道されることになれば、クリニックの経営にも大きな影響が生じることになります。
患者の立場になって考えればわかる通り、脱税をしたドクターの診療を積極的に受けたいという人は少ないはずです。
医療とは関係のない税金上の問題とはいえ、法に反することをしたドクターに自分の大切な身体・生命を委ねるのにはやはり抵抗があるでしょう。新規の患者は訪れず既存の患者も離れていけば、最悪の場合、経営が立ちゆかない状況に陥ってしまうかもしれません。
実際、脱税にかかわらず院長が何らかの違法行為をしたことがきっかけとなって患者から見放され、経営破綻したクリニックは少なくありません。
常日頃から「申告と納税」に留意する姿勢が重要
ここまで見てきたように、脱税あるいは重大な申告漏れが発覚すれば、その当事者であるドクターは深刻なダメージを受けることになります。
しかしながら税務調査というのは、過去の申告内容について実施されるのです。ということは税務調査が入ることがわかってから準備しても時すでに遅しです。申告済みの内容はいまさら訂正できないのです。常日頃からの申告と納税に対する姿勢がそのまま調査結果に反映されるのです。この点に十二分に留意しておくことが重要です。
「任意調査」は納税者の同意のもと行われる
税務調査には「強制調査」と「任意調査」の2種類があります。