「大病院でもない限り、税務調査とは無関係だろう」――この考えはまったくの誤解です。個人経営のクリニックに対しても税務調査は行われます。クリニックに対する税務調査の実態を説明します。*本記事は、佐野明彦氏の著作『妻に隠しごとがあるオーナー社長の相続対策』(幻冬舎MC)から抜粋、再編集したものです。

①戒告は、行政処分の原因となった行為について反省を求め戒める処分です。

 

②医業停止・歯科医業停止は、所定の期間だけ医業・歯科医業を行うことを禁止する処分です。停止期間が経過すれば医業・歯科医業を再び行うことが可能となります。

 

③免許取り消しは、ドクターの免許を取り消してその資格を失わせる処分であり、最も重い処分です。なお、免許取り消し処分を受けた後で再免許を受けることが認められる場合もあります。

 

これらの処分は厚生労働大臣が決定しますが、決定にあたっては事前に医道審議会の意見を聴くことが法律によって求められています。医道審議会とは厚生労働省に設置されている審議会であり、複数の分科会から構成されます。そのうち、ドクターの資格に関する行政処分を審議するのは医道分科会であり、行政処分の内容等を審議する会議を年2回開いています。

医師の脱税に厳しい処分を下す「医道審議会」

医道審議会は、ドクターの脱税について次のような一般的見解を公表しています。

 

「脱税は、ドクターとしての業務に直接関わる事犯ではないが、ドクターとしての品位を損ない、信頼感を喪失せしめることから、行政処分に付することとし、行政処分の程度は、基本的には、司法処分の量刑などを参考に決定する。

 

また、医療は非営利原則に基づいて提供されるべきものであることから、医業・歯科医業に係る脱税は、一般的な倫理はもとより、ドクターとしての職業倫理を欠くものと認められる。このため、診療収入に係る脱税など医業、歯科医業に係る事案は重めの処分とする」

 

一読すればわかる通り、脱税については基本的に行政処分の対象とすること、しかも医業・歯科医業に関する脱税については処分の内容を厳しくすることが明らかにされています。

 

実際、医道審議会によって審議された近時の処分例を見ると、このような方針が徹底されていることがわかります。

 

図表にある通り、医業停止・歯科医業停止はもちろん、中には医師免許を剥奪されたケースもあるのです。

 

【図表】医道審議会の処分例

※同様の処分が複数行われた場合については件数を示した。
 厚生労働省HPより作成
※同様の処分が複数行われた場合については件数を示した。
 厚生労働省HPより作成

 

脱税事犯で起訴された場合の有罪率は100%!?

脱税・申告漏れへのペナルティとして忘れてはならないのは、悪質な場合には刑事罰を科される可能性があることです。

本連載は、2016年9月27日刊行の書籍『クリニック税務調査読本』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

クリニック税務調査読本

クリニック税務調査読本

髙田 一毅

幻冬舎メディアコンサルティング

【税務調査はもう怖くない! 税務調査官が必ずチェックする科目別ポイントを公開】 情け容赦のない「税務調査」によって、苦しみ悩まされている医師・歯科医師が後を絶ちません。強制調査だけでなく、事前の通知と調査対象…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録