自分の資産残高が「ボタン一つ」で瞬時に複数通貨に…
お金に関する自分の「思い込み」を見つめ直すきっかけとなった私の経験の一つは、イギリスからアメリカに引っ越すにあたり、イギリスの銀行のオフショア口座(金融機関が外国人や非居住者向けに開設する口座。資産運用目的に特化していることが多い)を偶然に保有した時ときのことでした。
その際、私は、自分の口座の資産残高が、ボタン一つで瞬時に、複数通貨(英ポンド、ユーロ、米国ドル、スイスフラン、日本円など)へ切り替えられる状態を見ました。
当時、頭に雷が落ちた事を、鮮明に覚えています。自分の資産を(日本人の私でいえば)「日本円」という一つの通貨に換算して考えることが当たり前で、それは何ら問題ないと、無意識に考えていた事に気づかされたのです。
一方、この口座を使っている海外の個人投資家は、自国の通貨だけではなく、世界の様々な人から見た視点で、自分の資産額やその変化を測っていたのです。つまり、私は自分中心に考える天動説で、この口座の利用者は自身を相対的にとらえる地動説であったということです。私は、投資のプロとしても、今までの自分の視野の狭さに、大変恥ずかしくなりました。
このときから、人々の資産形成のゴールとは、自国通貨(日本人でいえば日本円)で自分の資産を長期に増やすのではなく、世界の様々な通貨ベースで自分の資産を長期に増やすのだと、大きくマインド・シフトしました。つまり、グローバルな投資と、グローバルな資産管理は表裏一体である、という大事なことに気づくことができました。
「行動が変われば人生が変わる」
この経験は、私のなかでの為替への考え方が、教科書的で表面的なものから、本質的なものに変わったきっかけになりました。為替の変動で、一通貨に換算した資産額が変動することは問題では無いのです。そもそも、一つの通貨だけで資産を管理していること、それに疑問を感じずに無意識に資産運用を行なっていることが、本質的なリスクなのです。
世界は一つに繋がっています。日本の世界における大きさは、人口で世界の2%弱、経済規模で5%強に過ぎません。我々の毎日の生活に必要な、石油や食糧は海外からの輸入でまかなわれています。そして日本は世界へ様々な製品やサービスを提供して、自国の豊かさを創り出しています。