3姉妹を嫁がせ、夫との思い出の家で悠々自適の老後を送っていた女性ですが、広い敷地が不動産会社の注目を集め、アパート建設を勧める会社が日参。なかには設計図や事業計画書を用意するところまで…。一体どうすればいいのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。
老後生活を送る婦人のもと、サブリース会社が日参
今回の相談者は、70代の女性、S藤さんです。長年専業主婦をしており、夫との間に授かった3人の娘たちは、20年近く前に全員嫁がせています。末娘が家を出てからは夫婦だけで暮らしていましたが、一昨年、長年連れ添った夫が逝去。以後、現在までひとり人暮らしをしています。
自宅は地方都市のローカル線の駅から徒歩3分程度で、土地も300坪ほどとかなりゆったりしています。土地と建物は夫が亡くなったときにS藤さんの名義にしています。自宅の土地の半分は空き地になっていて、現在は貸し駐車場です。駅近の駐車場は人気が高く、S藤さんのよい収入源になっています。
ところが夫を亡くして以降、広い敷地にゆったりと暮らすS藤さんの生活に注目した不動産会社から、営業マンが日参するようになりました。
「広い土地には高額な相続税がかかること、ご存じですか?」
「駐車場の土地を有効利用してアパートを建てたら、相続税の節税対策になりますよ」
「このままでは、奥さんに何かあったとき、お嬢さんたちの負担になりますよ」
「お嬢さんたち、親が迷惑をかけたら、嫁ぎ先でさぞ肩身が狭くなるでしょうねぇ…」
「見識のある親が財産を増やして残すケースはいくらでもあるのですがね…」
複数の会社がしつこく訪問を繰り返し、S藤さんは家でくつろぐこともできません。おしまいには、頭がどうにかなりそうでした。
ある日、いちばん規模の大きい不動産会社の営業マンが、複数の部下たちを引き連れてやってきました。あたかも契約が成立したかのような口ぶりで、図面や事業計画書を持ち込み、リビングに居座るという暴挙に出たのです。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載相続実務士発!みんなが悩んでいる「相続問題」の実例