先妻の娘たちを育て、長男も生んでくれた後妻。しかし、夫親族との折り合いは最悪で、家族関係には問題が山積しています。ストレスから心を病んでしまった後妻と長男の生活を、夫として、父親として守る方法はあるのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

「自宅を相続するのは私」と、長女から再三の要求が…

最近、先妻の長女が頻繁に訪ねてくるようになりました。

 

 

「お父さん、この家、ゆくゆくは私が相続したいんだけど」

「お父さん、相続の件、考えておいてくれた?」

「お父さん、私にも相続の権利があるってこと、まさか忘れてないよね?」

 

Y田さんが後妻と長男で暮らす家がほしいと、結婚して家を出た長女が、たびたび要求を突きつけるのです。Y田さんが言葉を濁し、すぐに返答をしないでいると、間を置かず何度も訪ねてきては、自分に自宅を残すよう詰め寄ります。

 

「私がY田家の長女なの! なんで後妻に気を使わないといけないの? 本当のお母さんと暮らした思い出の家を取り上げるつもり!? 絶対あきらめないからね!」

 

長女のもの言いやふるまいは、かつて自宅にわが物顔で家に出入りしていた、Y田さんの母親や姉にそっくりでした。それをたびたび見せつけられた後妻も、すっかり精神的に参ってしまいました。

 

Y田さんとしても、先妻の長女の要求を受け入れるつもりはなく、自宅は苦労を掛けた後妻と、将来が心配な長男に渡したいと思っています。自分が亡くなったあとも、後妻と息子が安心してわが家で暮らし続けるにはどうしたらいいのかと、Y田さんは筆者のところへ相談に見えました。

 

筆者が確認したところ、自宅の土地と建物の評価は2000万円程度でした。そのため、配偶者の特例を利用し、後妻に贈与することをアドバイスしました。婚姻20年以上であれば、居住用の財産は2000万円まで贈与税がかかりません。贈与すれば、相続を待つまでもなく妻の所有となり、次に後妻の長男へと相続させることができます。

 

この提案に納得したY田さんは、すぐに自宅を妻に贈与し、その後、長男に多く現金を残す内容で、遺言書を作成することにしました。筆者からは、先妻の子どもたちには結婚の際、すでにまとまった現金を贈与してある点、異母弟の病状を理解してもらいたいという心情を遺言書に記載するようアドバイスし、Y田さんもそのように書き添えました。

 

相続が発生する前から自宅がほしいと主張を繰り返している先妻の長女にとって、後妻への実家の贈与と、長男に手厚い遺言書の内容は納得しがたいものかもしれません。とはいえ、遺言書には財産を持つY田さんの意思が優先されるわけですから、これがいちばんの説得材料になるといえます。

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    本記事は、株式会社夢相続が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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