近年、「副業」が世間の高い関心を集めている。不景気で実収入の減少に加え、増税も後押しし、ますます家計を圧迫する現状が続く。自身も多数の副業を手掛ける俣野成敏氏が、将来に不安を感じるすべてのサラリーマンに「副業」のメソッドを紹介する。本連載は俣野成敏著『サラリーマンを「副業」にしよう』(プレジデント社)から一部を抜粋した原稿です。

ビジネスの鉄則「自分の好みをビジネスに持ち込むな」

副業を始める前にもう一つ考えてほしい視点は、「自分にとっていいものが、必ずしも売りモノに直結はしない」ということです。

 

事例をお話ししますと、以前、私のコンサルティングを受けにこられた人で、Gさんがいました。Gさんは当時、まだ独立したばかりで、お客さんが一人もいない状態でした。詳しくお話を伺うと、Gさんはもともと、大手の会社に勤めるシステムエンジニアでした。しかし、人間関係に悩んだ挙句、休職していた時期がありました。

 

Gさんのことを心配した知人が、著名なコーチングの先生を紹介。Gさんは、その先生の指導を受けた結果、すっかり回復し、復職を果たしました。その技術に感動したGさんは、「自分もコーチングの先生になって、同じような境遇の人を助けたい」と考えます。こうして、コーチング講座終了後、お客さんが一人もいない状態で独立してしまったのです。

 

独立当初、Gさんはコーチングの力に自信を持っていたので、「みんなにその効果を実感してもらえば、お客さんになってくれるに違いない」と思っていました。そこで、知人に次々と声をかけ、無料お試しをしてもらうことにしました。

 

ところが、知人たちは無料お試しには応じてくれるものの、誰も「お金を払いたい」とは言ってくれません。そうこうしているうちに、貯金を使い果たしてしまい、結局、Gさんはサラリーマンに戻るしかありませんでした。

 

もし、Gさんがサラリーマンを辞める前に、副業で知人の反応を確かめていれば、このような結果にはならなかったかもしれません。

 

実は、「自分の好みをビジネスに持ち込まない」というのは、ビジネス用語として使われている「マーケットイン」「プロダクトアウト」の考え方にも通じます。マーケットインとは、市場や顧客の立場から、顧客のニーズを掘り下げ、商品化することを言います。対するプロダクトアウトとは、開発者側の目線から考え、商品開発を行うことです。

 

Gさんの「自分がいいと思ったものは、他人もいいと思うに違いない」という発想は、まさしくプロダクトアウト的な考え方です。実際に、プロダクトアウトの発想が、世界を変えてきた一面があるのは事実です。

 

現在の代表的なプロダクトアウト型の企業としては、 Google、 Apple、 Facebook、 Amazonといった、いわゆるGAFAが挙げられます。彼らは、それまでの世界にはなかったサービスを生み出し、顧客に提供することで、世界のトップ企業となりました。GAFAの場合、彼らのサービスを市場が受け入れたという意味では、「GAFA→市場」のように、矢印が逆向きになっています。

 

Appleの創業者、スティーブ・ジョブズ氏の有名な言葉に「多くの場合、人は形にして見せてもらうまで、自分は何が欲しいのかわからないものだ」というのがあります。顧客すら意識していないことを、ビジネスにするのが究極のプロダクトアウトだということです。

 

しかし残念ながら、これができるのは、一握りの人に限られます。だったら、私たち凡人はどうすればいいのか?というと、もちろん「市場→私たち」というマーケットイン思考で考えることです。実際、私が今、行っている事業の中で、自分の好き嫌いや自分にとっていいものを基準に始めたものは、一つもありません。

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サラリーマンを「副業」にしよう

サラリーマンを「副業」にしよう

俣野 成敏

プレジデント社

「老後2000万円問題」「働き方改革」「残業規制」…等々。政府も会社も「自助努力でなんとか生きよ」と突き放す中、コロナ・ショックによる「リストラ」が、さらに追い討ちをかけています。一方で、自己責任の名のもとに「副業…

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