東京都在住の清子さんは、夫の遺産相続時に子どもたちがもめたことを教訓として、生前に公正証書遺言を作成しました。ところが清子さんの死後、長男は「こんな遺言は認めない」と激高。この「争族」の背景にあったのは、兄弟間の収入格差と怨恨(えんこん)でした。 ※本記事は、一般社団法人相続終活専門協会代表理事・江幡吉昭氏の書籍 『プロが教える  相続でモメないための本』(アスコム)より一部を抜粋したものです。

高卒の長男、一流大学出身の次男…嫉妬が生んだ憎悪

■相続割合に大差のある遺言をあえて書いた母の意図とは

 

もはや収拾がつかなくなってしまったこの「争族」。その当事者である淳次さんご夫婦が私の事務所へ相談に訪れたのは、このやりとりの2週間後でした。淳次さんご夫婦から「争族」のいきさつを聞いた私は、さらに詳しく事実関係の確認を行いました。

 

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「おそらくお母さまなりの配慮があったのでしょうが、やはり相続割合に差がつくともめるケースは多いですね。特に、お兄さまのように子どもの頃からの不公平感を抱えていらっしゃる場合、これを機に爆発してしまうケースはよくあります。私も最大限お力になりますが……まずは、なぜお母さまが遺言で淳次さんの相続割合を4分の3にし、お兄様の相続割合を4分の1にしたのか、その理由を教えていただけますか?

 

書籍『プロが教える 相続でモメないための本』
書籍『プロが教える 相続でモメないための本』

確かに相続割合に3倍も差があれば、少ない側のお兄さまが不満を持つことは容易に想像できたはずです。にもかかわらず、なぜお母さまはそのような遺言を残したのでしょうか」

 

すると、淳次さんは静かに口を開きました。

 

「母から直接聞いたわけではないので多少推測もありますが……」

 

■父親の遺産相続で積年の恨みに火がつく

 

父親の義明ががんを患い亡くなったのは、今からちょうど10年前。東京の大手企業に勤めていた義明は、都内に自宅を構え、那須高原に別荘を持っていた。

 

長男の一樹は、小さい頃から勉強が嫌いでやんちゃだった。地元の高校を卒業後、大学へ進学せず中堅の不動産会社に就職。その後、職を転々として最終的に埼玉県の中小企業で定年退職を迎えた。

 

一方、弟の淳次は都内の一流大学を出て大手商社に入社。海外赴任も経験し、36歳のときに都内でマンションを購入。父親が亡くなったのは、その商社で課長として働いている頃だった。

 

誰が見てもわかるとおり「残念な兄と優秀な弟」の組み合わせである。

 

兄弟が3年ぶりに顔を合わせたのは、父親が急死したときだった。そして四十九日を終え、家族3人が実家で向き合った遺産分割協議の席で、冒頭の口論が起こった。

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