世界的に超低金利時代へ突入している。そんな状況下、新型コロナウイルスの感染拡大で、事態はまさに「打つ手なし」。しかし、ここにきて注目されているのがMMT(現代貨幣理論)である。有識者から袋叩きにあい、さらにネット上でも支持派と否定派が議論を繰り広げている。MMTは救世主なのか、トンデモ理論なのか。本連載は、経済アナリストの森永康平氏の著書『MMTが日本を救う』(宝島社新書)を基に、MMTとはどんな理論なのかをわかりやすく解説していく。過去の著書には父・森永卓郎との共著『親子ゼニ問答』(角川新書)がある。

「世界最悪」の政府債務残高も、財政拡張の余地あり

本連載ではMMTにおける特徴的ないくつかの主張を見てきたが、著名な経済学者から中央銀行や政府関係者に至るまで、MMTは多くの否定的な意見を集めている。多く見られる否定的な意見の1つが、「財政赤字を続けるのは不可能であり、財政黒字を目指す、つまり財政健全化が重要だ」というものだ。

 

しかし、これまで見てきたMMTの考えからすれば、この考え方は誤っている。まず、「機能的財政論」に基づけば、財政が赤字だから緊縮財政、黒字だから財政拡張といった、数字だけを見て財政政策の方向性を決めることはないということだ。不況なら財政赤字であろうが財政拡張し、財政黒字であってもインフレが亢進する場合は緊縮財政をして総需要を抑えにいけばよい。

 

「ストック・フロー一貫モデル」の観点から言えば、財政黒字が生じているということは、民間部門か海外部門で赤字が発生しているということであり、それは結果的に過剰な借り入れやバブル発生の懸念要因となる。また、民間部門の借り入れ、債務膨張が続くはずもなく、いずれはバブル崩壊へと繫がっていってしまう。民間部門で貯蓄を発生させるためには、政府部門が赤字であることが基本的な状態であると考えられるため、財政黒字を積極的に目指すことはおかしいのである。

 

巨額の財政赤字、世界最悪レベルの政府債務残高と言えば、私たちが住む日本がいの一番に挙げられる。ただ、MMTの考え方に基づけば、日本は変動相場制を採用し、自国通貨を発行出来る国なので、税収による財政的な制約を課されることもない。だから財政赤字を気にせずにもっと積極的に財政出動をして成長を促した方がいい、となる。

 

MMTでは税収ではなく、物価上昇率が制約になる。現在の日本はデフレ状態にはないものの、低インフレ状態が長期にわたっているため、MMTの観点からは十分に財政出動をする余地があるということになる。

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MMTが日本を救う

MMTが日本を救う

森永 康平

宝島社新書

新型コロナウイルスが猛威を振るい、世界経済が深刻な落ち込みを見せる中、世界各国でベーシックインカムや無制限の金融緩和など、財政政策や金融政策について大胆なものが求められ、実行されている。そんな未曾有の大混乱の最…

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