「使おうと思えば使える」が、生活スタイルを変えない
都内で一人暮らしをする山口さん(仮名・75歳)は、見た目にはごく普通の高齢者です。着ている服は量販店で購入したもの、移動は主に電車か徒歩。外食も多くはなく、生活ぶりは質素そのものでした。
しかし、その内実は大きく異なります。
山口さんの金融資産は、およそ2億円。現役時代に会社経営と投資で資産を築き、引退後も大きく減らすことなく維持してきました。
「特別なことはしていません。ただ、使いすぎなかっただけです」
年金収入もありますが、生活費の多くは資産から取り崩すことなく賄えているといいます。
金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査(2023年)』によると、70歳代の二人以上世帯の平均金融資産は1,757万円です。山口さんの資産は、その平均を大きく上回る水準にあります。
それでも生活スタイルを変えない理由について、山口さんはこう話します。
「目をつけられたくないからね」
その言葉の背景には、ある出来事がありました。
「派手に暮らしている人は狙われる」実感したリスク
山口さんがその考えに至ったのは、60代後半の頃でした。
当時、知人の一人が資産を背景に生活水準を上げ、高級車やブランド品を身につけるようになりました。ところが、その後、投資詐欺に巻き込まれ、大きな損失を出したといいます。
「詳しい経緯は分かりませんが、明らかに狙われていたと思いました」
その知人は、日常的に資産状況を周囲に話していたわけではありません。それでも、生活ぶりから「余裕がある人」と見られていた可能性はあったといいます。
「目立つことで、余計な関心を引いてしまうことがあると感じました」
その出来事をきっかけに、山口さんは生活スタイルを意識的に抑えるようになりました。時計や衣類はシンプルなものに。住まいも以前と変わらず、特別にグレードを上げることはありませんでした。
「使うことが悪いとは思っていません。でも、自分にとってはリスクのほうが大きいと感じました」
