祖母の思いが叶い、自宅はカワイイ孫のものに
「祖母から相続の話を聞いたときは、私は17歳で。相続なんて小説の中で出てくる話と思っていたので、びっくりしました」とA美さん。負担を感じて、祖母からの申入れを一度は断ったそうです。しかし祖母からの熱心な説得が続き、最終的にA美さんは決心しました。
その後、A美さん18歳のお正月。祖母は、集まった子どもたちの前で、相続があったときの話をしました。遺産は自宅と預貯金のみ。預貯金は2,000万円ほどあるから、子どもたち3人で均等に分けるように。そして自宅はA美さんが相続するように――。
この話を初めて聞いたとき、A美さんの伯父であるBさん、Cさんはもちろん、母であるD子さんも驚きの声をあげたそうです。
「なんでA美に家を? 孫に自宅を相続する、というところまではいいけど、孫は6人いるだろう。A美だけ、というのは不公平なんじゃないか?」
祖母の話に異議を唱えたのは、BさんとCさんでした。確かに、不公平に感じるのは当然だったかもしれません。それに対し祖母は、自分の思いをゆっくりと話始めました。
「あの家は、お祖父さん(=祖母の夫)のご先祖様から継いだものだから、この先も大事にしてほしいの。この中で本当に大切にしてくれるのは、A美だと思うの。それに今でも毎日のようにお見舞いに来てくれて。何か遺したいと思うのは、ヘンなことかしら」
A美さんが近くにいたから、祖母が入院しても安心していられたのは事実。BさんもCさんも、これ以上反論することはありませんでした。
それから半年後、祖母は亡くなりました。
「祖母が亡くなったとき、私は東京の大学に進学していたので、以前のように祖母の家に行く機会も減っていました。でも遺言書も残してくれていたので、相続はスムーズでしたよ。未成年だった私は、手続とか、管理とか、全部、親まかせでしたけど」
A美さんが驚いたのは、祖母が亡くなったあと、久々に祖母が遺した家を訪れたときのこと。祖母とA美さんが暮らしていたときは、冷蔵庫や洗濯機、テレビなど、家電はすべて十年以上も前のもの。典型的な“田舎のおばあちゃんの家”でした。しかしA美さんが見たのは、すべてが最新家電だったのです。
A美さん「おっ、お母さん、何これ?」
D子さん「お祖母ちゃんが、家電が古いままだったら、A美も暮らしにくいでしょって。だからすべて一新してから、A美に相続しようって、お祖母ちゃんが」
思いがけない祖母からのプレゼントに、A美さんは、涙が止まりませんでした。