日本では年間約130万人の方が亡くなっています。つまり相続税の課税対象になろうが、なかろうが、130万通りの相続が発生しているのです。お金が絡むと、人はとんでもない行動にでるもの。トラブルに巻き込まれないためにも、実際のトラブル事例から対策を学ぶことが大切です。今回は、編集部に届いた事例のなかから、不動産にまつわる相続トラブル事例をご紹介。円満相続税理士法人の橘慶太税理士に解説いただきました。

根っからのおばあちゃん子のA美さんに相続話

[登場人物]
●祖母
●A美さん…孫。20歳の大学生
●Bさん…A美さんの伯父であり、祖母の長男
●Cさん…A美さんの伯父であり、祖母の次男
●D子さん…A美さんの母であり、祖母の長女

 

「一瞬、目を疑いました」

 

そう話すのは、祖母から自宅を相続したという、大学生のA美さん。祖母の相続が発生したのは、3年前。A美さんはまだ未成年でした。先日、久々に相続した家に訪れたとき、目の前に広がる光景に唖然としたそうです。

 

そもそも、祖母の相続において、A美さんは相続人ではありませんでした。このとき、相続人だったのは、A美さんの伯父であるBさんと、Cさん、そしてA美さんの母であるD子さんの3人です。

 

祖母は生前からA美さんに自宅を相続したいと口にし、実際に遺言書でもA美さんに自宅を相続することが記されていました。

 

「私には3人のいとこもいて、2人の兄もいるんですが、祖母から相続を受けたのはわたしだけでした」とA美さん。つまり祖母には6人の孫がいましたが、A美さんだけに財産を遺したのです。

 

相続した祖母の自宅は九州のとある片田舎にあるそう。A美さんは子どもの頃から祖母の家に遊びに行くのが楽しみにしていました。

 

「東京育ちなので、自然いっぱいの祖母の家が大好きだったんですよね。小学生になってからは、夏休みの間ずっと、私1人だけ祖母の家に泊まりに行っていました。夏休みが始まった日から、夏休みが終わる日まで、ずっーと。父と母と兄は、お盆休みの間だけ来るんですけどね」と笑うA美さん。

 

さらに祖母の自宅がある町の私立中学を受験。中学3年間は祖母の家から片道1時間かけて学校に通っていました。

 

「一貫校だったので、高校もそのまま内部進学で、祖母の家から通うつもりだったのですが、ちょうどその頃、祖母が体調を崩して入院してしまって」

 

高校生になったA美さんは、学校近くの下宿から通学するようになったのだとか。一方で、祖母が入院している病院も近かったため、毎日のようにお見舞いに行っていました。

 

「祖母が元気だった頃、母も伯父も実家に帰ってくるのは、年に1度か2度か、それくらい。祖母が入院してからはその回数も増えましたがが、それでも数ヵ月に1度くらいだったかな」

 

自身の子ども以上に濃い時間を過ごした孫に、何か遺してあげたい、と思うのは、自然の流れでしょう。ある日、A美さんは祖母から、祖母の家を継いでほしいと言われました。

 

いつもお祖母ちゃんが優しく迎えてくれた
いつもお祖母ちゃんが優しく迎えてくれた

 

 

次ページ祖母の思いが叶い、自宅はカワイイ孫のものに…

※本記事は、編集部に届いた相続に関する経験談をもとに構成しています。個人情報保護の観点で、家族構成や居住地などを変えています。

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