人気金融商品の落とし穴〜毎月分配型ファンド
■毎月分配のカラクリ
定期的に分配金が得られることで人気を博している毎月分配型投資信託。お小遣いのような位置づけで、年金の足しにしている高齢の方が多い傾向にあるようです。証券会社はもちろんですが、銀行や郵便局でも積極的に販売しています。
しかし、ピークの2015年に43兆円にまで膨らんだ残高は、2019年末時点で半分近くにまで目減りしています。理由は、分配金を引き下げていることと、「複利効果が得にくい」など金融当局が問題視したため、各金融機関が販売に慎重になったからです。
それでも年間分配利回り10%以上を維持しているファンドも多くあり、一見すると信用性の高いファンドであるように感じます。
しかしじっくりと中身を眺めてみると、意外な落とし穴があることに気づきます。まず気になるのは、分配金が必ずしもファンドの運用益によってもたらされているわけではなく、元本を切り崩しているところも少なくないことです。つまり、「高い利回り=運用実績が優れている」とは断言できないのです。
なかには、高い利回りを維持しているのは元本を崩しているからで、運用実績は低調のファンドもあることでしょう。
年金の足しにするというコンセプトは悪くないのですが、高い分配金を売り文句にして、高リスクの分配型ファンドへと勧誘する金融機関の姿勢は改める必要があります。これから資産を形成していく若年層には特に、私はお勧めしません。
■二重三重のリスク
分配金利回りが高いものは、おもにリート(不動産投資信託)が組み込まれている傾向があります。さらには、通貨選択型の投資信託も組み入れて、利回りを高くしているものもあります。
通貨選択型を取り入れているということは、ブラジルレアルやトルコリラといった通貨の為替リスクを含んでいることを意味します。通貨の金利分が上乗せされていますが、その分リスクも増えているのです。
ということは、株式投資のリスクに加えて、不動産や為替のリスクも掛け合わせているのが毎月分配型ファンドという見方もできます。確かに利回りは見栄えが良くなりますが、非常に高リスクの金融商品となり、そんなものを、安定収入を見込んでいる顧客に勧めるべきではありません。
すべての毎月分配型ファンドがこのようなリスクの掛け合わせをしているわけではありませんが、高い利回りにつられて勢いで投資を決めるのは禁物です。
続きは明日(8/4)配信。
※本記事は書籍『株オタクの現役IFAが指南!本当に儲かる「株」講座』を抜粋したものです。
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原田 茂行
IFA/自由が丘財産コンサルタンツ合同事務所代表/一般社団法人シニアウェルスライフ協会代表理事