「小売電気事業者」は一般の需要に応じ電気を供給する
電気の小売市場に参入するに当たって、どのようなビジネスがあるのか、また「小売電気事業者」としてライセンスの取得が必要となるビジネスとは何なのかを考えていきたいと思います。
小売全面自由化を定めた2014年改正電気事業法第2条では、小売供給を「一般の需要に応じ電気を供給すること」とし、また小売電気事業を「小売供給を行う事業(一般送配電事業、特定送配電事業及び発電事業に該当する部分を除く)」としています。
しかし、一口に電力小売といっても、さまざまな形態が考えられるはずです。どのビジネス形態が小売ライセンス取得の対象となるのかについて、2015年6月、7月に開催された経済産業省総合資源エネルギー調査会の電力システム改革小委員会制度設計ワーキンググループ(WG)の第13回、第14回会合では、具体的なビジネスモデルを示し、小売ライセンス登録の要否を議論しています。
これによると、どのようなビジネス形態であろうとも、最終需要家と小売供給契約を締結する事業者は、基本的に小売ライセンスが必要ということになっています。
様々な小売事業形態が存在する点に要注意
一方、小売電気事業者と提携し、小売電気事業者と最終需要家の小売供給契約締結を代理する、もしくは契約締結の媒介、または取次を行う場合は、小売ライセンスは必要ありません。
少し気を付けたいのは、取次事業者は小売ライセンスがなくても、小売電気事業者と取次委託契約を結ぶことで最終需要家と小売供給契約を締結することが可能であり、小売事業者に独自の料金メニューを提供してもらうこともできます。
ただし、その場合も、最終需要家への説明義務などを負うことが前提となります。
また、マンションなどで展開される高圧一括受電や、需要家に代わって小売電気事業者と契約交渉を行うアグリゲーターについては、電気事業法上で規定された事業類型ではないものの、需要家保護の措置を取ることを前提に許容される見通しです。このほか、今後はさまざまな小売事業形態が登場してくると思われます。
いずれにせよ、ライセンスを取得した小売電気事業者には、お客さまである需要家の電力消費量に相応する供給力を確保しなければならないという供給能力確保義務のほか、料金メニューや供給条件などの重要事項について説明する責務があります。
バーチャルといっても、社会インフラを担う事業ですから、責任ある事業であることは間違いありません。
本連載では、小売ライセンスを取得して電力小売ビジネスを展開する方法を解説しています。なお、代理や媒介、取次といったビジネスは、小売電気事業者としてシェア拡大に向けての戦略となり得るので、頭に入れておきたいものです。