2016年4月から電力小売の前面自由化が開始されます。本連載は、関電システムソリューションズ株式会社ビジネスコンサルティング部の最新刊で、2016年1月に刊行された『ウチの会社 電気売るんだってよ』(一般社団法人 日本電気協会新聞部)の中から一部を抜粋し、電力小売ビジネスの概要と開始にあたってのポイントをご紹介します。
各事業者が同条件で送配電網を利用できるように・・・
発送電分離(法的分離)は、電力システム改革の総仕上げと位置づけられる法律改正です。電力会社の送配電部門を別会社とするもので、資本関係は認められる(持ち株会社も可能)ため、持ち株会社下に発電事業会社、送配電事業会社、小売事業会社を構成する形態になると想定されます。
ただし、以下のような規制をかけることにより、新規参入事業者と電力会社系の発電事業者・小売事業者が同じ条件(イコールフッティング)で送配電網を利用できるようになることが企図されています。
[規制の内容]
●一般送配電事業者/送電事業者が小売電気事業や発電事業を行うことを禁止
●適正な競争関係を確保するため、一般送配電事業者/送電事業者と、そのグループの発電事業者や小売電気事業者などに対し、取締役の兼職禁止などの行為規制を措置
戦後体制から転換、電気事業体制は新たなステージへ
発送電分離には会計分離、法的分離、機能分離、所有権分離の4類型があり、これまで日本では「会計分離」が採用されてきました。
しかし今回の電力システム改革においては、「中立・公平・透明性」「安定供給」「コスト」といったことが慎重に検討され、その結果、「法的分離」が採用されることになりました。
[図表]発送電分離の4類型
第3弾の改革の実施によって、東日本大震災を契機に実施することになった電力システム改革は完了します。第5次電気事業制度改革となるこの改革によって、日本の電気事業体制は、戦後体制から転換し、新たなステージへと向かうことになります。
それでは、電力システム改革の本丸ともいえる第2弾の改革、小売全面自由化によって開かれる低圧部門の電力小売ビジネスについて、次回以降で詳しく見ていきましょう。
関電システムソリューションズ株式会社
経営戦略本部ビジネスコンサルティング部
部長
1992年、慶応義塾大学経済学部卒。住友生命保険、オージス総研、プライスウォーターハウスクーパースなどを経て、2013年より現職。
これまで、電力会社、ガス会社、鉄道会社など、社会インフラ企業向けサービスを多数手掛けており、豊富なプロジェクト・マネジメント経験を有している。現在は、新電力向けビジネスを立ち上げ、事業計画・業務プロセス設計の支援からITの導入まで、小売電気事業者向けサービスに幅広く従事している。
著者プロフィール詳細
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連載電気小売全面自由化!「小売電気事業者」になるための基礎知識
関電システムソリューションズ株式会社
経営戦略本部ビジネスコンサルティング部
シニアコンサルタント
中小企業診断士
2005年、京都府立大学農学部卒。京セラコミュニケーションシステムなどを経て、2013年より現職。
これまで新規事業開発プロジェクトを多数手掛けて来ており、PPS(新電力)立ち上げ企画も経験。現在は新電力向けビジネスを立ち上げ、電力小売に参入する数多くの事業者に対して、事業立ち上げサービスを提供。確かな情報収集力に基づく戦略の提案、実践的な業務プロセスの設計を強みとしている。
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