市場規模のわりに極めて参入しやすい
これまでにも触れましたが、小売全面自由化の対象となる低圧部門の市場規模は約7.5兆円といわれています。これは通信自由化以来の大きな市場開放です。通信が自由化されて、固定電話から携帯電話、インターネットへと市場が大きく変革したことを考えると、いっそう期待は高まるでしょう。
しかも、小売電気事業者は需要家(お客さま)に対して電気を供給・販売しますが、電気がつくられてお客さまに届けられるまでの間、電力供給に要する設備の一切について物理的な関与をしません。
小売電気事業者が発電事業者を兼ねて自社電源を保有するケースもありますが、小売電気事業自体は大きな設備投資を要することなく参入できるのです。
電気自体が目で確認できるものではないこともあり、電力小売事業は非常にバーチャルな性質を持ったビジネスといえます。自社の商品に触れることなく業務を遂行していくことからも、「在庫を全く抱えず、物流も完全に外部委託しているファブレス企業」あるいは「商社/トレーダー」という方が近いイメージでしょう。
そのため、電力小売事業は、市場規模のわりに極めて参入しやすいといえ、通信会社や不動産関連の企業、ガス会社などさまざまな企業が参入を表明しているのもうなずけます。
そして、すでに展開している自社の既存事業とのシナジー効果を生みだしたり、あるいはHEMS(Home Energy Management System)や蓄電池など新しい技術を生かした魅力的なサービスを提供することによって、ビジネスが大きく広がる可能性を秘めているのです。
低圧部門の電気小売事業はイメージしにくいが・・・
とはいうものの、低圧部門というマスマーケットを相手にした電気の小売事業は、これまでは電力会社の中に閉じられていましたので、イメージしにくい部分もあるのではないでしょうか。
電力小売ビジネスを開始するには、どのような準備と業務が必要なのでしょう。ここからはその概要を見ていくことにします。