書類審査の目安は1カ月、不備があれば登録拒否も
書類がすべて整ったらいよいよ提出です。提出先は経済産業省資源エネルギー庁の電力・ガス事業部政策課電力市場整備室で、こちらに持参するか郵送します。
審査には1カ月程度かかる見通しとなっています。途中、追加の質疑対応や書類作成が必要となることもありますので、事業開始日が決まっている場合は、余裕を持って申請を行うようにしましょう。
申請に当たり、事業者は自社の電力小売事業の事業計画をしっかり検討しておく必要があります。
小売事業を開始するに当たり、特に発電設備や送電設備を自社で持つ必要はなく、「ファブレス」事業に近いと述べましたが、電気は生活必需品ということもあり、その事業性が登録審査の段階でも問われることになります。
小売電気事業登録申請書の記載内容にもあったように、まだ計画段階で需要想定や供給能力の確保が精緻になっていないという場合でも、できる限り詳細に説明しなければなりません。
審査の段階で必要な供給能力を確保できる見込みがない、あるいは需要家の利益保護のために適切でないと認められる場合には、登録が拒否されることもあり得ることを肝に銘じておいてください。
一般送配電事業者と託送に関する契約を結ぶ
小売電気事業者の登録、広域機関への加入、SW支援システムなどの利用手続きが完了すると、事業を始めるための手続きとして最後に残るのは、一般送配電事業者との託送に関する契約の締結です。一般送配電事業者のネットワークを使って電気を供給するために必要となる手続きです。
託送サービスを受けるための契約には、①接続供給契約、②発電量調整供給契約、③振替供給契約——があります。提供するサービス内容や調達する電源によって必要な手続きが異なりますので、各一般送配電事業者の託送供給等約款を確認した上で、契約手続きを進めてください。
【託送サービスに関する契約】
①接続供給契約
電気を販売する地域では、そのエリアの一般送配電事業者の託送供給等約款に基づき、「接続供給契約」を締結します。これは、SW支援システムを利用して供給地点ごとに個別に託送契約を結ぶための前提となる基本契約という位置づけです。
②発電量調整供給契約
再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)で認定された電源から電気を調達する場合、小売電気事業者がその受電地点(再生可能エネルギー発電設備)のあるエリアの一般送配電事業者と「発電量調整供給契約」を結ぶ必要があります。
③振替供給契約
調達した電源の受電地点と供給地点が異なり、連系線を利用する場合は、受電地点が存在する一般送配電事業者と「振替供給契約」を締結しなければなりません。複数の連系線を経由する場合は、中継するエリアの一般送配電事業者とも契約締結が必要です。なお、連系線の利用を検討する場合は、広域機関に「連系線希望計画」を提出して、連系線の容量を確保しなければならず、空き容量がなければ利用することはできません。