新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『不動産で知る日本のこれから』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産を通して日本経済を知るヒントをお届けします。

相続人がいない「おひとり様」マンション急増中

通常であれば管理組合は、相続人が確認できれば、当然のこととして相続人に対して管理費・修繕積立金の請求を行なうことになる。ところが相続人としての届け出が行なわれておらず、どこに請求してよいのかわからなくなるケースが発生しているのだ。

 

相続人を見つけ出して、滞納分を請求できても、相続人が外国住まいであったり、相続人が複数存在するとなると、各相続人間の共有財産ということでコミュニケーションが取れずに、なかなか思うように徴収できないケースも増えている。

 

首都圏郊外のあるマンション管理会社の社員は、最近の事情を次のように話す。

 

「最近は相続人の方をつきとめても、本人にマンションを継ごうという意識がさらさらありません。中には『困っているなら差し押さえでもして売ってくださいよ』と言ってくる人までいる始末です」

 

この相続人が言うように、最終的にはマンション住戸を差し押さえたうえで、競売等にかけて滞納分を回収していくというのが法律上の手続きとなるが、時代環境は変化している。

 

以前であれば、流通市場に出せば確実に売却できたマンションも、立地や築年数、設備の状況などによってはまったく買い手がつかないケースも出始めている。競売によって確実に滞納金が回収できるという保証は、どこにもない。

 

管理費の滞納が300万円、住戸内の後片付け費用で100万円、リニューアル費用で300万円、管理組合で計700万円かけて売却に出したものの、売れない。最終的に売却できた金額は400万円だったなどという事例も、珍しいことではなくなっている。差し押さえるための手続き、弁護士費用なども組合員から集めた管理費しか元手がない中、管理組合もおいそれと手が出しにくいというのが現状だ。

 

さらに問題がやっかいになってくるのが、相続人がいないマンション住戸の増加だ。「おひとり様」があたりまえになってきた日本社会。少子高齢化の進行は核家族どころか結婚をしない、兄弟、身寄りのない単身者の増加を招いている。こうした区分所有者に相続が発生すると、相続人がいないということになる。

 

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不動産で知る日本のこれから

不動産で知る日本のこれから

牧野 知弘

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