ビジネスで海外の人々と関わる際、自国の歴史の知識は必須だといえます。しかし、日本人が注意しなくてはならないのが「外国人に関心の高い日本史のテーマは、日本人が好むそれとは大きく異なる」という点です。本連載は、株式会社グローバルダイナミクス代表取締役社長の山中俊之氏の著書『世界96カ国をまわった元外交官が教える 外国人にささる日本史12のツボ』(朝日新聞出版)から一部を抜粋し、著者の外交官時代の経験をもとに、外国人の興味を引くエピソードを解説します。
一方海で隔てられた日本は同質性が相対的に強く国内での文字の必要性は低かったと考えられます。
話が脇道にそれますが、おそらく中国は世界でもっとも自国の歴史について記録を残してきた国です。一方で、同じアジアの大国インドはウパニシャッド哲学など哲学的思考の国。「歴史の中国、哲学のインド」といった特徴があります。
本論に戻りますと、中国は3世紀に三国志の時代になりますが、このうちの最強国である魏(ぎ)の国史である『魏志』倭人伝に邪馬台国についての記述があります。
後漢が滅亡して以降、中国は、魏・蜀(しょく)・呉(ご)の三国が鼎立(ていりつ)する時代になりました。魏の曹丕(そうひ)、呉の孫権(そんけん)、蜀の劉備(りゅうび)の三人の英傑が天下を目指して割拠する時代になったのです。
卑弥呼が親魏倭王の称号を与えられたのは、この三国の勢力争いにおいて蜀の皇帝となる劉備玄徳に「三顧の礼」で迎えられた諸葛孔明(しょかつこうめい)が死去して5年程度後のことでした。三国志の時代と卑弥呼の時代が重なる点を意識すると、今後歴史を学ぶ際にイメージが膨らみそうです。
山中 俊之
株式会社グローバルダイナミクス 代表取締役社長
株式会社グローバルダイナミクス
代表取締役社長
神戸情報大学院大学教授。「世界と日本」の歴史や文化に関する企業研修やセミナーを多数実施。1968年兵庫県西宮市生まれ。東京大学法学部卒業後、90年外務省入省。エジプト、英国、サウジアラビアへ赴任。対中東外交、地球環境問題などを担当する。また、首相通訳(アラビア語)や国連総会を経験。外務省を退職し、2000年、株式会社日本総合研究所入社。全国の自治体改革の案件に多数関与。09年、稲盛和夫氏よりイナモリフェローに選出され、アメリカ・CSIS(戦略国際問題研究所)にてグローバルリーダーシップの研鑽を積む。10年、グローバルダイナミクスを設立。SDGsカードゲームファシリテーターとしてSDGsの普及にも務める。ケンブリッジ大学大学院修士(開発学)。高野山大学大学院修士(仏教思想・比較宗教学)。ビジネス・ブレークスルー大学大学院MBA、大阪大学大学院国際公共政策博士
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連載世界96ヵ国をまわった元外交官が教える「外国人にささる日本史12のツボ」