日本では年間約130万人の方が亡くなっています。つまり相続税の課税対象になろうが、なかろうが、130万通りの相続が発生しているのです。お金が絡むと、人はとんでもない行動にでるもの。トラブルに巻き込まれないためにも、実際のトラブル事例から対策を学ぶことが大切です。今回は、編集部に届いた事例のなかから、遺言書にまつわる、あるきょうだいの間で起きたトラブル事例をご紹介。円満相続税理士法人の橘慶太税理士に解説いただきました。
遺言書の内容に驚愕!無効を訴え、右往左往
子どものいないE子の葬儀は、A子さんの母であるB子さんが喪主を務めました。そのとき、式に参列してくれた施設のスタッフから、遺言書の存在を聞きました。その遺言書が、トラブルの火種になりました。
そこに書かれていたのは、「遺産のすべてを寄付する」という内容で、どこにいくら寄付するのか、細かく指定されていたといいます。その総額は1億円を超えていました。そしてその内容に驚愕したのが、C子さんとDさん。
「なんで! あんなに良くしてあげたのに、なんという仕打ち!」
「全額寄付なんて嘘だろ! 1円も遺さないなんて薄情者!」
遺言書を開封した際には、きょうだい以外にも人はいましたが、C子さんとDさんはそんなこと構うことなく、大きな声でわめき散らしました。そして寄付先のひとつである、E子さんが入居していた介護施設に乗り込みました。
「『お前らが妹にけしかけたんだろ!』などと因縁をつけたみたいですよ。施設の方も寝耳に水だったようで、驚いたでしょうね……」
実は、そのような遺言書を書くことを勧めたのは、A子さんの母でした。
「2人の様子をみていて、もしE子さんの相続が発生したら、多かれ少なかれ揉めるだろうから、きょうだいにお金を遺してくれるな、自分が納得する遺し方をしなさいと」
そんな事情を知らず、2人はAさんの母に遺言書は無効だと同意するようにと迫りましたが、Aさんの母は首を縦にふることはありませんでした。
円満相続税理士法人
代表 税理士
大学受験の失敗から一念発起し税理士を志す。大学在学中に税理士試験に4科目合格(法人税法の公開模試では全国1位)し、大学卒業前から国内最大手の税理士法人に正社員として入社する。
勤務税理士時代は相続専門の部署で6年間、相続税に専念。これまで手掛けた相続税申告は、上場企業の創業家や芸能人を含め、通算400件以上。また、銀行や証券会社を中心に、年間130回以上の相続税セミナーの講師を務め、27歳という若さで管理職に抜擢される。
2017年1月に独立開業し、現在7名の相続専門税理士が在籍する円満相続税理士法人の代表を務める。週刊ポストや日本経済新聞、幻冬舎、女性自身など、様々メディアから取材を受けている。また、自身で運営しているYouTubeのチャンネル登録者は6万人を超えており、相続分野では日本一のチャンネルに成長している。
円満相続税理士法人:https://osd-souzoku.jp/
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