日本では年間約130万人の方が亡くなっています。つまり相続税の課税対象になろうが、なかろうが、130万通りの相続が発生しているのです。お金が絡むと、人はとんでもない行動にでるもの。トラブルに巻き込まれないためにも、実際のトラブル事例から対策を学ぶことが大切です。今回は、編集部に届いた事例のなかから、嫁姑問題に絡んだ相続トラブル事例をご紹介。円満相続税理士法人の橘慶太税理士に解説いただきました。

相続人となった孫に降りかかる、祖母の怒り

90歳を超えていた祖父。大往生といったところでしょうか。葬儀がひと通り終わった後、祖母の呼びかけで相続人たちが集められました。集まったのは、祖母、Aさんの2人の叔父、そしてAさんの4人。

 

叔父1「ごめんな、A。意心地が悪いだろう。ただ死んだ兄貴に代わって、君も相続人になるから」

 

Aさん「いえ、叔父さん。父の代わりというのは、母からも聞いていたんで」

 

叔父2「で、あれか、まだ義姉さんと母さんは、バチバチなのかい?」

 

Aさん「そうですね…まったく顔を合わせてないですね」

 

2人の叔父とAさんがコソコソ話していると、祖母がやってきました。祖父よりは若いとはいえ、80歳を超えています。葬儀でバタバタしていたということもあり、少々疲れている様子でした。

 

祖母いわく、祖父の遺産は自宅と、現在は駐車場として貸し出している自宅に隣接した土地、そして現金が5,000万円ほどとのこと。

 

叔父1「へぇ、たいしたもんだな、親父」

 

叔父2「そんなに金持ちだったとは、知らなかったよ」

 

祖母「私は、住む家だけあれば十分。だからそれ以外のことで分け方を考えたいの」

 

叔父2「母さんがそういうのであれば、それでいいけど」

 

叔父1「じゃあ、駐車場と現金をどう分けるか、ということか」

 

祖母「ただひとつだけ言わせて、Aには1円も渡したくない」

 

叔父1、2「えっ!?」

 

Aさん「……」

 

叔父1「なんでそんなこと?」

 

祖母「あの女には、1円も渡したくないの!」

 

叔父2「あの女って、義姉さんのこと?」

 

祖母「そうよ、あの女のせいで、この家はめちゃくちゃよ!」

 

叔父1「ちょっと待ちなよ、母さん。義姉さんは相続人じゃない。相続人はA。死んだ兄さんに代わって、きちんと遺産を分けるべきだと思うよ」

 

祖母「いえ、Aはあの女が出ていったとき、かばったの。あの女の味方なのよ」

 

叔父2「味方とか、敵とかないだろう」

 

叔父1「そうだよ、母さん。そんなこといったら、兄さんも父さんも、心配で出てきちゃうよ」

 

祖母「何よ! あなた達もあの女の肩を持つのね!」

 

捻じれに捻じれ、解けなくなった嫁姑問題。結局、2人の叔父の仲裁で、遺産分割は何とかまとまり、駐車場は売却して現金化し、3等分することになったといいます。しかし母と祖母の関係は、改善しないまま、今日に至るそうです。

 

 

次ページ解説:遺産を相続できる、法定相続人の範囲と順位

※本記事は、編集部に届いた相続に関する経験談をもとに構成しています。個人情報保護の観点で、家族構成や居住地などを変えています。

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