日本では年間約130万人の方が亡くなっています。つまり相続税の課税対象になろうが、なかろうが、130万通りの相続が発生しているのです。お金が絡むと、人はとんでもない行動にでるもの。トラブルに巻き込まれないためにも、実際のトラブル事例から対策を学ぶことが大切です。今回は、編集部に届いた事例のなかから、預金通帳にまつわる相続トラブル事例をご紹介。円満相続税理士法人の橘慶太税理士に解説いただきました。

上京した次男…借金に苦しみ親に泣きつく

「どこで足を踏み外してしまったんでしょうね」とため息をつくAさん。これは、弟のBさんに向けられた言葉でした。

 

Aさんは3人兄妹の長男で、3歳年下の次男Bさん、4歳年下の長女C子さんがいました。3人は年が近かったこともあり、子どものころは争いが絶えなかったといいます。「ケンカがするだけ仲がいい」と両親は、どんなに大事であっても止めることはありませんでした。

 

大人になり、AさんとC子さんは地元に残り、地元の企業に就職し、地元の人と結婚しました。一方のBさんは、兄妹で唯一地元を離れ、大学進学とともに上京しました。

 

「Bは中学生にあがったくらいから、『こんな田舎を早く出たい!』と口にするようになっていましたね。確かに、田んぼばかりで、娯楽といえば、街の中心にあるカラオケボックスくらいでしたから、退屈に感じるのも仕方がないことだったかもしれません」

 

上京したBさんがお盆やお正月に帰省してくるたびに、少しずつ垢ぬけていくのを感じていたとAさん。

 

「帰ってくるたびに、身に着けるアクセサリーが増えていって、ジャラジャラさせてくるわけですよ。はじめは何もいわなかった親父が我慢できなくなって『男のくせに首輪なんてつけてくるな、恥さらしが!』と怒鳴って。さずがにネックレスを“首輪”というのはどうかと、家族みんなで大笑いしましたけど」

 

Bさんに変化があったのは、むしろ、就職してからだったといいます。

 

「『社会人だから良いものを持たないと』とかいって、突然、ブランドものを身に付けるようになったり、外車に乗るようになったり。会社員なのに羽振りがいいなあと思っていたんですよね」とAさん。

 

就職して何年か経ったある日、お盆でもお正月でもなく帰省してきたBさん。Aさんがあとから聞いた話では、お金の無心で帰ってきたというのです。はじめはカードローンを利用していたけれど、段々とそれでは足りなくなって、最終的には、リスクの高いところからお金を借りるようになったとか。

 

「会社にも電話がかかってくるようになって、両親に泣きついた、という顛末らしいです。それで500万円ほど、工面してもらったようです」

 

この一件で懲りて心を入れ替えたと思ったAさん。しかしBさんは、借金の取り立ての電話が来たことで会社に居づらくなり、退社。そのあとは定職に就かずにフラフラしていました。ギャンブルで負けて、再び、お金を無心してくることもあったとか。援助しようとする両親をAさんは「Bのためにやめろ!」と必死で止めていました。

 

次第に、家族とBさんは疎遠になっていき、最低限の連絡をし合う程度になったといいます。

 

 

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※本記事は、編集部に届いた相続に関する経験談をもとに構成しています。個人情報保護の観点で、家族構成や居住地などを変えています。

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