上京した次男…借金に苦しみ親に泣きつく
「どこで足を踏み外してしまったんでしょうね」とため息をつくAさん。これは、弟のBさんに向けられた言葉でした。
Aさんは3人兄妹の長男で、3歳年下の次男Bさん、4歳年下の長女C子さんがいました。3人は年が近かったこともあり、子どものころは争いが絶えなかったといいます。「ケンカがするだけ仲がいい」と両親は、どんなに大事であっても止めることはありませんでした。
大人になり、AさんとC子さんは地元に残り、地元の企業に就職し、地元の人と結婚しました。一方のBさんは、兄妹で唯一地元を離れ、大学進学とともに上京しました。
「Bは中学生にあがったくらいから、『こんな田舎を早く出たい!』と口にするようになっていましたね。確かに、田んぼばかりで、娯楽といえば、街の中心にあるカラオケボックスくらいでしたから、退屈に感じるのも仕方がないことだったかもしれません」
上京したBさんがお盆やお正月に帰省してくるたびに、少しずつ垢ぬけていくのを感じていたとAさん。
「帰ってくるたびに、身に着けるアクセサリーが増えていって、ジャラジャラさせてくるわけですよ。はじめは何もいわなかった親父が我慢できなくなって『男のくせに首輪なんてつけてくるな、恥さらしが!』と怒鳴って。さずがにネックレスを“首輪”というのはどうかと、家族みんなで大笑いしましたけど」
Bさんに変化があったのは、むしろ、就職してからだったといいます。
「『社会人だから良いものを持たないと』とかいって、突然、ブランドものを身に付けるようになったり、外車に乗るようになったり。会社員なのに羽振りがいいなあと思っていたんですよね」とAさん。
就職して何年か経ったある日、お盆でもお正月でもなく帰省してきたBさん。Aさんがあとから聞いた話では、お金の無心で帰ってきたというのです。はじめはカードローンを利用していたけれど、段々とそれでは足りなくなって、最終的には、リスクの高いところからお金を借りるようになったとか。
「会社にも電話がかかってくるようになって、両親に泣きついた、という顛末らしいです。それで500万円ほど、工面してもらったようです」
この一件で懲りて心を入れ替えたと思ったAさん。しかしBさんは、借金の取り立ての電話が来たことで会社に居づらくなり、退社。そのあとは定職に就かずにフラフラしていました。ギャンブルで負けて、再び、お金を無心してくることもあったとか。援助しようとする両親をAさんは「Bのためにやめろ!」と必死で止めていました。
次第に、家族とBさんは疎遠になっていき、最低限の連絡をし合う程度になったといいます。