新型コロナウイルスの感染拡大により、混乱が続いていたアメリカ不動産市場。2020年3月27日に可決・成立した、新型コロナウィルス対策の景気刺激策である「Coronavirus Aid, Relief, and Economic Security Act(CARES Act)」は、アメリカ不動産オーナーにどのような影響を与えるのか。株式会社WIN WIN Properties Japan代表取締役の柳原大輝氏が解説する。

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3月27日、2兆ドルを超える大型経済対策法案が成立

3月27日、新型コロナウィルス対策の景気刺激策である「Coronavirus Aid, Relief, and Economic Security Act(CARES Act)」が米国連邦議会で可決されたのち、トランプ大統領の署名により、成立しました。2兆ドルを超える大型経済対策法案です。アメリカとしても最大規模です。

 

国内総生産(GDP)の約1割に値し、リーマンショック後の景気刺激策で投じられた7,870億ドルをも軽く超えています。ニュースなどで見かけた方も多いかと思いますが、2兆ドルもの予算がどんなことに費やされるのか、そして不動産投資への影響についてもお伝えしていきます。

 

新型コロナウィルスに対する経済対策法案としては、第3弾となります。

 

第1弾は、3月6日に成立した83億ドルの緊急補正予算法です。

 

ワクチンの研究・開発費用、公共衛生機関への財政支援が大きく占め、そのほか損害を受けた中小企業への低利融資、外国医療機関の支援などに割り当てられました。

 

明確
緊急性の高いものから、予算が割り振られていることがわかる

 

第2弾は、3月18日に可決された100億ドル規模の経済対策「Families First Coronavirus Response Act」。新型コロナウィルスの検査無償化、本人または家族が感染した際の従業員の有給取得の確保、低所得者向けの食料補助、失業保険拡充のための各州への財政支援などが含まれました。

経済対策法案の第3弾、「2兆ドルの予算」の内訳は?

それではまず、2兆ドルの内訳を見ていきましょう。

※各報道をまとめたおおよその内訳です

 

◆個人/家計・・・約6037億ドル

大人に1200ドル、子供には500ドルが支給されます。(年収7万5,000ドル以上の家庭は給付額が縮小され、9万9,000ドルを超える場合は対象外)また、失業保険給付の拡充として、通常の給付に加えてさらに週600ドルが支給され、13週間分の給付期間も追加されます。

 

連邦学生ローンの支払いは、9月末まで停止します。

 

◆大企業・・・約5000億ドル(航空関係含む)

大部分は、米連邦準備理事会(FRB)による大企業や州政府などへのゼロ金利での融資、国債や社債の買い入れに充てられます。そのほか、航空会社向けの助成金と融資に充てられ、燃料税の免除もされます。

 

◆中小企業・・・約3770億ドル

1社あたり1000万ドルを上限に、従業員の平均月額給与の250%まで融資を受けられます。雇用の維持ができれば、返済は不要。そのほか休業補償として賃金の50%分の税額控除、給与税支払いの延期・一部返済猶予などが含まれます。

 

◆地方自治体・・・約3398億ドル

打撃を受けた地方自治体へ、新型コロナウィルスへの対処としての直接的支援となります。

 

◆医療機関・・・約1795億ドル

病院や医療施設への支援に大半が使用されます。検査用品・人工呼吸器・マスクの確保、患者収容施設の建設、ワクチン開発など。

 

これほどまでに大規模な経済刺激策でしたが、中小企業の給与支払い補助の利用申請が殺到し、開始2週間で上限に達してしまい受付を停止せざるを得ない状況となりました。想定よりも遥かに企業へのダメージが大きいということが分かります。

 

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4月24日に「第3.5弾」と位置付けられた追加の経済対策法案が成立しました。中小企業の雇用対策に3700億ドル、医療体制の整備に1000億ドル、総額4800億ドルの追加資金が投入されました。

アメリカ不動産投資には、どう影響する?

さて、今回の経済刺激策が不動産投資にどう影響があるのか。

 

新型コロナウィルスの影響で家賃が払えなくなっている方が増える中、イビクション(入居者の法的な立ち退き行為)の手続きも延期になっているため、物件を持ち、普段インカムゲインを得ている投資家の方には困っている方もいらっしゃることでしょう。

 

一連の経済刺激策は、新型コロナウィルスが終息した際に、企業や個人が活動や生活をなるべく以前までと近い状態で再開できるように支援することが目的となっています。休業中、リモートワーク中でも給与が支払われ、仮に失業してしまった場合でも手当が給付されることで、生活再開時に、入居者が家賃を払える状態にいられるということです。

 

さらに、実は今回の法案「CARES Act」には、物件を所持しているオーナー向けに、最低60日間、リクエストすれば180日間までのモーゲージの支払い猶予が受けられる救済処置が含まれています。また、その時点で返済が困難な場合は、さらに180日間の猶予期間延長も可能になっています。

 

基本的には連邦政府があるモーゲージに限られていますが、そうでない場合はまずはモーゲージ会社に確認するのがベストです。

 

つまり、慌てる必要はありません。もちろん新型コロナウィルスはまだ終息していませんので、楽観視できる状況ではありませんが、オーナーも入居者も救済処置がとられている状態ですので、皆さんが窮地に追い込まれるわけではないです。

 

以前お伝えしたとおり、まずは物件管理会社と連係をとって入居者の状況確認をしましょう。そして、必要であれば、モーゲージの支払い延長申請の手続きを行い、今後の対策を検討することをおすすめします。

 

柳原大輝

WIN/WINProperties,LLC 共同代表

株式会社WINWINPropertiesJapan 代表取締役

 

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