家賃と収入の上昇率…差が大きい米都市トップ10
アメリカ国内の各地で、家賃が限りなく上昇を続けています。景気拡大を続けるアメリカでは平均収入も上昇していますが、家賃上昇のスピードはそれでは追いつかないほどです。家賃上昇と収入上昇のペースに大きな差が生じ、値上がりする家賃は持家がない住民に不安を及ぼしています。住民たちに預金をする余裕はなく、収入の大半を家賃にあてている状態です。
2014年から2018年までの家賃と収入の上昇率を比較し、最も差が生じているトップ10の都市をリストアップしました。
<家賃と収入の差トップ10都市>
①デトロイト(ミシガン州)
自動車工業都市のデトロイトで、生活のやりくりをするのは困難な状態といえます。2014年から2018年の間、家賃は平均的に月々390ドル上昇。同期間中、一世帯の年間収入の上昇は平均で4,600ドルでした。ここから、一般的なアパートを賃貸するには、家賃を収入の47%以下に留めておく必要が伺えます。収入に対し、家賃は9.8%の上昇となっています。
②ニューオーリンズ(ルイジアナ州)
観光客に大人気の都市、ニューオーリンズでは、地元住民がAirBnBの目的で貸家を買い占めています。それにより、全体的な家賃の上昇がはじまりました。アパートの平均的な上昇額は月に330ドル、年間4,000ドル近くになります。しかし、収入は1,500ドル程度の上昇にしか及ばず、収入に対しての家賃上昇率は9.1%になります。
③ロングビーチ(カリフォルニア州)
カリフォルニア、特に南カリフォルニアでは、収入の多くを家賃に費やすのが一般的です。調査によると、2014年のロングビーチの平均家賃は1ヵ月あたり1,600ドル弱でした。貸家の需要は2014年から2018年にかけて新たな供給を上回り、月あたり2,100ドルまで跳ね上がりました。収入は増加していますが、新しい家賃負担には十分に対応しきれていません。毎月の家賃は、一世帯収入の35%未満から、7%増加して42%になりました。
④フィラデルフィア(ペンシルバニア州)
2018年の平均家賃は、1ヵ月あたり約1,600ドルです。これは、2014年から1ヵ月あたり226ドル程度増加した額です。フィラデルフィアの借り主の大きな問題は、収入の増加が低調であることです。賃料上昇と収入上昇が鈍化した結果、収入の割合としての賃料が42.7%から48.7%になりました。
⑤サクラメント(カリフォルニア州)
カリフォルニア州から2つ目の都市として、サクラメントが挙げられます。もともとサクラメントは、カリフォルニア州内では高額ではない都市です。しかし、2014年から2018年の間、月々の家賃は約393ドル上昇し、借り手は収入の上昇をそのまま家主に払うことになったのです。2014年に収入の24.7%相当だった家賃額が、2018年には29.4%にまで引きあがりました。
⑥シャーロット(ノースカロライナ州)
ノースカロライナ州の最大都市シャーロットでは、賃料が上昇しています。2014年から2018年にかけて、平均家賃は27%増加しました。一方、収入は11%しか増加しませんでした。これら2つの数値を合わせると、収入額内の3.3%増が家賃上昇にあてられる割合となり、住民の大きな負担は避けられています。2018年の平均賃貸料は、平均世帯の収入のわずか26.3%に相当します。
⑦ナッシュビル(テネシー州)
もう1つの南部の都市、そしてAirbnb所有者にとっても人気のある都市ナッシュビル。ミュージックシティと知られている市の賃料は、2014年から2018年にかけて377ドル(37%)増加しました。幸い、収入も順調に増加しています。同じ期間に、一世帯収入の上昇中央値は年間で10,500ドル、つまり22%増加しました。平均家賃は、2014年には収入の25.9%だったのに対して、2018年には29%になりました。29%は依然として健全な範囲内ですが、借り主や地域の人々は数字が上昇しているという事実は考慮する必要があるでしょう。
⑧ミルウォーキー(ウィスコンシン州)
トップ10に頻出する2つ目の中西部都市です。2014年、多くの世帯では家賃を払うことが困難になっていました。当時、家賃が一世帯の収入の36%に相当していたのが、2018年には38.2%までに上昇しました。
⑨コロンバス(オハイオ州)
2014年から2018年にかけて、家賃は2.1%上昇しました。収入は5,000ドル以上の上昇が見られましたが、問題は家賃上昇の激しさです。2014から2018年の間、平均家賃は873ドルから1,062ドルまでになり、22%上昇しました。その間、収入の上昇率は11.2%でした。
⑩サンディエゴ(カリフォルニア州)
サインディエゴは、このトップ10都市のなかでも一番高収入な都市になります。それにも関わらず、住民個人の財政事情はよくなる見込みはあまりありません。2018年の家賃は収入の約33%となり、2014年と比較すると2%の上昇です。
大都市「NY、SF、LA」がトップ10入りしない理由
<まとめ>
◆中西部とカリフォルニア州
10都市中6都市は、中西部とカリフォルニア州でした。
◆収入の停滞VS家賃の上昇
家賃と収入の差がでる理由は、大きく分けて2つになります。1つは、家賃上昇のほうが収入上昇を上回っていることです。2つ目は、家賃上昇は少額ですが、収入上昇が見られない点です。ニューオーリンズは後者になります。収入は年間1,500ドル程度しか上昇していないのに対し、家賃は月々530ドルを超す増加が見られました。
◆予測外れに大都市は除外
新聞などの見出しでよく見られる大都市、ニューヨーク、サンフランシスコ、ロサンゼルスの家賃は高額と知られていますがトップ10入りはしていません。これは、家賃上昇が見られるなか、収入も同時に上昇しているため、家賃と収入のギャップは狭まっているのです。
家賃上昇の見込みはありますが、住民たちの収入がそれに追い付いていません。投資物件を買うにはあまり適した都市とはいえないかもしれません。
柳原大輝
WIN/WINProperties,LLC 共同代表
株式会社WINWINPropertiesJapan 代表取締役