コロナショックの収束が見えない現在、日本の中小企業は危機的状況に置かれています。しかし、ビジネスは常に平穏ではありません。どのような状況下においても、経営者が会社と従業員を守るには、したたかな戦略が必要です。現在の経営の問題点に気づくヒントを、自身も経営者であり、コンサルティングを業務とする筆者が解説します。

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    「いまの事業では先行きが不安」だとしたら…

    中小企業の行く末には、人、お金、そして市場の変化という3つの壁が立ちはだかっているということについて、『コロナショック後…「勝ち残る会社・消滅する会社」の違いとは』で詳述した。そこから考えてみてほしいのは、今ある商品、サービス、ビジネスモデルで、この3つの壁を乗り越えられるかどうかである。

     

    人を安定的に確保し続けていける会社の魅力や強みはあるか。貸し倒れリスクや在庫リスクが大きくなった時、キャッシュフローはどれくらいの期間持ちこたえられるか。本業の市場はどの程度あり、今後の見込みはどうか。そういったことを考えていくと、未来の会社の経営状態もなんとなく見えてくるのではないか。

     

     

    仮にいまの事業では先行きが不安だとしたら、すぐにでも対策に取り掛かった方が良いだろう。つまり、事業内容を根本的に見直すか、あるいは、新たに第二の事業を作り出すことによって経営リスクを分散し、安定させるか、ということである。筆者は、第二の事業をスタートする道を推奨したい。なぜなら、市場そのものが縮小していくリスクがある以上、別の市場で事業をスタートする方が経営安定の効果が大きいと思うからである。

     

    東京商工リサーチの調査によると会社の寿命はだいたい20年だ。本業を諦めるということではない。本業は引き続き力を入れ、できる限り改善する。同時に、本業の収益力・信用力・資金調達力があるうちに、新たな市場で事業を始める。すると、仮に本業の収益が落ちたとしても、別の事業でその分を補える可能性が出てくる。会社全体としての収益が変動しづらくなり、倒産するリスクが小さくなり、安定的に経営できるようになるのだ。

     

    あああ
    事業を多角化することで、安定的な経営の実現が可能に

    進出すべきは、本業や本業の市場と関連の薄い分野

    第二の事業を考えるなら、本業や、本業の市場と関連性が薄い分野に目を向けるのが良いだろう。なぜなら、性質が似ている事業では市場が縮小した時の影響を避けにくくなるし、景気や経済の変化によって受ける影響も似通ってくるからである。

     

    経営者の多くは、本業で培ってきた経験、ノウハウ、人脈などを生かして新規事業を始めようと考える。例えば、たこ焼き屋がうまくいっているから、そのノウハウを生かしてお好み焼き屋をやるといった考え方だ。

     

    その方法は、たしかに効率はいい。しかし、果たしてそれは多角化なのだろうか、多角化というよりは本業の拡大であり、人、お金、市場の変化という3つの壁を乗り越えるための対策にはならない。同じ市場内でジャンルが違う店を出しても、市場そのものが下火になればダメージは倍増する。1店舗だけならマイナス1000万円で収まったかもしれないが、2店舗に増やせばマイナス2000万円になる可能性がある。リスクの本質はそこにある。事業の拡大と会社を守るための多角化は、別のものとして考える必要があるのだ。

    事業の多角化は「経営の安全性」を高める手段

    「この道一筋何十年」といえば、プライドも感じるし聞こえはいい。多角化による経営の安定化を推奨する筆者も、「本業一本勝負」の姿勢は素直にかっこいいと思うし、アイデアや技術で勝負し、会社を大きくしてきた創業社長たちを尊敬している。

     

    しかし、いくらかっこ良かったとしても、経営者は最近の目まぐるしい市場の変化に対応して経営リスクを抑えなければならない。会社はそこで働く人たちにとって生活の基盤であり、自分や家族、働く人たちとその家族の幸せも、会社という基盤の上に成り立っている。

     

     

    その基盤を固め、盤石にするのが経営者の役割であることは言うまでもない。業種や企業の規模などは関係ない。企業の使命は、人の喜ぶことを提供し、それを提供し続けるために利益と従業員満足度を上げることだと筆者は考える。

     

    経営を通じて社員や取引先、そして経営者自身を幸せにするために、経営の安全性を高める必要がある。そのための手段として事業の多角化という考え方があるのだ。

    労働集約型から資産形成型へ

    新規事業のアイデアはいろいろある。しかし、人、お金、市場の変化という3つの壁もある。例えば、人の採用や教育、属人化がリスク要因だとすれば、このリスクを根本的に解決する方法は一つしかない。人を雇わずに成立する事業を手がけるという方法だ。

     

    人の力で収益を得る事業を労働集約型の事業とすれば、人を使わず投資だけで行う事業は資産形成型のビジネスといっても良いだろう。資産形成型のビジネスとは、簡単に言えば、とくに手間をかけなくても継続的に投資した物自体が利益を生み出してくれるもののことだ。その資産を持ち、活用する。できるだけ手間がかからず、できるだけ多くの利益を生み出してくれる資産を手に入れる。

     

    筆者は、資産形成型ビジネスの例え話をよく顧問先の経営者にする。手元に1000万円の現金があったとする。これで車を購入しようと思うのだが、購入したら手元の現金が車に代わる。その投資もいいのだが、こうは考えられないか。この現金1000万円で中古の利回り20%の不動産物件を買う。そして車は1000万円の5年ローンで購入する。利息は考えない場合、5年後には借金ゼロで不動産と車の二つが手元に残る。仮にこの不動産が生涯この利回りを稼ぎ続けるとすれば、車は5年おきに一生タダで買い換えられる計算になる。

     

    不動産賃貸業の会社が、銀行からの借り入れで不動産を購入し、収益を得て返済に回す。これを繰り返し行うことで、借金のない不動産が何棟も手元に残る。実際、私も不動産賃貸会社の決算を10年以上組んできて、このような状況をたくさん見てきた。会社の資金調達力を利用して、借り入れで不動産を購入し不動産収入を得るのも面白い。

     

    また、この不動産収入は、長期にわたり本業を支える柱ともなりうる。例えば、マンションやオフィスビルを購入すれば定期的に家賃やテナント収入が入ってくる。毎月決まった収入が確保できるようになれば、本業の収支が多少ぐらついても、仮に本業の固定費がその収入で賄えれば、経営全体に対する影響は小さくなる。実際に本業が悪化してきた会社で、不動産やコインランドリーのような収入で乗り切った会社をいくつも見ている。

    不動産ビジネスは、市場の変化が課題

    本業とは別の事業として不動産を運用し、賃料収入で稼いでいる会社は多い。また、過去には競売物件などを通じて、事業の安定化を図るコンサルティングを何件も行ってきた。実際、不動産の運用はメリットが多い。しかも日本は超低金利で融資が受けられる。これを利用しない手はない。

     

    前述した通り、人にまつわるリスクを大幅に減らせるし、3つの壁の二つ目に挙げた貸し倒れと不良在庫のリスクも抑えられる。不動産の収益は基本的には現金であるため、貸し倒れになるリスクがほとんどない。また、賃貸のビジネスであるから、在庫も発生しない。収益性はどれくらいかというと、平均利回りで5〜8%が相場だろう。飛び抜けて高い利回りとは言えず、各種メンテナンスコストなども考える必要はあるが、単純計算すると、20年くらいで投資した資金を回収できる。継続的に借り手がつくことが条件にはなるが、経営を安定させる効果は非常に大きいといえる。

     

    ただし、問題もある。それは、空室率の増加と未来の売却金額の不安定さへの懸念だ。人の生活には必ず住居が必要なため、不動産市場が消滅することはないだろう。しかし、国内の人口が減っていくことは明白だ。人口が減り、物件が余る供給過多の状態になれば、借り手の確保は難しくなる。家賃は基本的には需要と供給のバランスで決まるため、借り手がつかなくなれば家賃を下げることになり、結果、収益率は下がり、投資資金の回収期間は長くなる。

     

    しかも、最近では、相続税の基礎控除の切り下げによって、これまで相続税がかからない人たちが課税対象になった。そこに目を付けたレジデンスのデベロッパーは相続税対策をネタに営業を強化して、居住用不動産の供給過多に拍車をかけている。

     

    物件を買う人たちは、「うまくいかなかったら物件を売ればいい」と考えるだろう。しかし、供給過多で物件の空室率が高ければ、当然売却金額はたたかれることになるし、購入希望が出なければ保有せざるを得なくなる。固定資産税はかかるし、建物の修復にもコストがかかる。ビジネスは入り口と出口が大切だが、今から投資する不動産で最終的にどれだけの収益を獲得することができるのだろうか。そういった懸念から、不動産を顧問先に勧めることは今ではほとんどない。

    優位性と将来性を重視して事業を選択

    資産形成型ビジネスは素晴らしい。資金調達ができて、かつ、その市場が拡大傾向にあるのであれば、長い将来に自動的に収益を稼ぐ柱ができる。会社で保有しようが個人で保有しようが会社が安定し、経営者が退職後に生きていく資金となる。時には新しい事業を立ち上げる資金源になるかもしれない。

     

    では、具体的にどんな事業を手がければ良いのだろうか。私は、投資した資産が自ら金を生む資産形成ビジネスのたぐいをたくさん見てきたし、実数値も決算を通じて目の当たりにしてきた。

     

    例えば、筆者が会計事務所に勤務していたころ、担当をしていた会社が非常に面白い資産形成事業を展開していた。売上高約6000万円、役員報酬3600万円で社長の勤務時間は年間100時間、そのうちの50時間は筆者と月次報告と決算の打ち合わせをする時間だった。

     

    その会社の行っていた事業は「記念刻印メダルビジネス」。観光地や人が集まるところにメダルの販売機を設置し、メダルを販売している会社だった。粗利益率もいいのだが、商品の補充から集金まで全て業者がやってくれるので何もすることがない。驚くのは、たいして儲からないように見えてしっかりと利益を稼ぐ。そのうえ儲かると思われないため全く競合が現れないということだ。この事業は資産形成ビジネスと利権ビジネスの融合といったほうがいいかもしれない。

     

    他には足場材レンタル業、これも面白い。新品で購入すると一式1億円はする足場を資金調達力の乏しい足場屋さんにレンタルする。収益は年間3500万ほどにも上り、利回りはおおよそ30%を超える。しかし、独自のルートと建築業界の景気に大きく左右される。

     

    不動産事業の未来に懸念を持った筆者は、資産形成ビジネスで独自の業界ノウハウや販売ルートのいらない、一般の顧問先に提案できるようなものはないかと模索してきた。現金収入で属人的ではないことはもちろんだが、市場が拡大していき、フローではなくストック収入、景気に左右されにくく、熟成しておらず、なんらかの決定的な優位性を確保できる業界……。その答えが、「コインランドリー」である。コインランドリーは、これらの筆者の課題をすべて網羅し、資金力に恵まれない中小企業の経営を安定させ、経営者の未来を切り開くために必要な条件を満たしてくれる事業なのである。

     

     

    ※本記事は、『デキル経営者だけが知っている “稼ぐ”コインランドリー経営』より一部を抜粋・再編集したものです。

     

    鈴木 衛

    株式会社ジーアイビー代表取締役

    デキル経営者だけが知っている  "稼ぐ"コインランドリー経営

    デキル経営者だけが知っている "稼ぐ"コインランドリー経営

    鈴木 衛

    幻冬舎メディアコンサルティング

    「洗濯」を「選択」せよ!利益が伸びない、資金繰りができない、慢性的な人材不足・・・。経営者のあらゆる悩みは、新事業の“洗濯”で払拭する! 東京商工リサーチによると、中小企業の倒産件数は年間約8000社にも及びます…

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