前回は、最適な後継者の選定方法などを説明しました。今回は、「カリスマ型」経営者のケースにおける事業引き継ぎの成功事例を見ていきます。

経営者タイプ等が同じなら引き継ぎ自体はスムーズ

経営者タイプと職種タイプが同じ場合の引き継ぎは、まさに自らの分身として、ソフトもハードも従来のものをきちんと継承することができるでしょう。半面、引き継ぎ後に革新的な変革を起こすことは難しいかもしれません。

 

幹部には充分に理解してもらい、引き続きバックアップしてもらうように引き継ぎをすることが大切です。

 

●司令塔型

自らのリーダーシップにより後継者を指名する司令塔型は、カリスマ型経営者がよく選択する手法です。カリスマ性が高いほど社内でも敬意を払われていることから、後継者も社内の従業員も、その路線の継承を目指すことが多くあります。そういったケースでは特に、経営者タイプと職種タイプが同じであることが、効力を発揮します。

 

<成功事例>

1955年に創業されたA社は、日本のものづくりを支えてきた製造業の雄です。その経営者であり、技術者でもあるI氏の非凡な才能により、革新的な製品を世に送り出してきました。もともと家族ではじめた小さな工場は、高度経済成長の波に乗って発展し、社員を80人抱えるほどにまで成長しました。バブル崩壊で周囲の中小企業が打撃を受ける中、A社は踏みとどまり、I氏が新たな事業に活路を見出したことで、経営状況を良好なまま保つことができました。

 

I氏の人望は厚く、技術力、経営力も申し分ありません。まさに英雄的な経営者といえます。しかしさすがのI氏も、寄る年波には勝てず、判断能力の衰えを実感したことがきっかけとなって事業継承の準備をはじめました。

 

I氏には息子もいましたが、I氏とは別の会社に勤務していたため、最終的に選んだのは、技術部門出身で、自らの甥にあたるK氏でした。甥はI氏に心酔し、深い尊敬の念を抱いていました。また、経営者タイプもほとんど同一であり、I氏の経営方針に対しても共感を持っていました。

 

I氏は自らの引退の半年前に後継者を指名・告知し、社内への周知を図りました。反感を持つ社員がいれば自ら説得にあたるなど、社内調整を3か月行った結果、K氏は周囲の賛同を得たうえで社長に就任。事業の引き継ぎも極めてスムーズに行われました。

本連載は、2015年10月25日刊行の書籍『たった半年で次期社長を育てる方法』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

たった半年で次期社長を育てる方法

たった半年で次期社長を育てる方法

和田 哲幸

幻冬舎メディアコンサルティング

中小企業は今後10年間、本格的な代替わりの時期を迎えます。 帝国データバンクによると、日本の社長の平均年齢は2013年で58.9歳、1990年と比べて約5歳上昇しました。今後こうした社長たちが引退適齢期に突入します。もっと平…

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