志木市にないのに、「志木」駅!? どうしてそうなったのか…

どこの街に住むかの選択は、仕事やプライベートに大きな影響を与える。さらに家賃が家計支出の大きなウェイトを占めることを考えると、居住地は資産形成までも左右するといえる。総合的に考えて住みやすい街はどこなのだろうか? 20代後半から30代前半の単身会社員の住み心地を考えていこう。今回取り上げるのは、東武東上線「志木」駅。

にぎやかな駅前…お馴染みのチェーン店が集積

東武鉄道東上線の「志木」駅は、1日の乗降客数は10.5万人ほどで、東上線では5番目の規模を誇ります。現在、駅があるのはお隣の新座市。開業当初は志木市内にありましたが、駅の改良を経て、志木市にはない「志木」駅になりました。

 

 

行政区に志木の名前が登場するのは、1874年。当時、志木の前身となる引又宿と舘村が合併することになった際、経済力のある引又か、歴史ある舘とするかで揉め、命名は県に委ねられることになりました。県は江戸時代後期に作られた武蔵国の地誌『新編武蔵風土記稿』などに「志木郷」とあったことから、志木宿と名付けたといいます。

 

元々志木は、江戸時代、府中街道と新河岸川の交点の市場坂上付近(引又河岸)が交通の要衝として栄えていました。明治時代に東武東上線の開業とともに「志木」駅が誕生すると、東上線の主要駅として速達列車の停車駅になると、街の中心は市場坂上から「志木」駅周辺へと移行。いまでは、東武東上線のなかでも有数の商業地として知られています。

 

「志木」駅の周辺をみていきましょう。駅には飲食店や惣菜店、雑貨、書店など、使い勝手のいい40店がテナントとして入る商業施設「EQUIA 志木」があります。駅東口を出ると、再開発で誕生した複合施設「フォーシーズンズ志木」があります。核テナントとして「マルイファミリー志木」が入り、1~2階には惣菜店が中心の「まるい食遊館」も。EQUIAとマルイはペデストリアンデッキでつながっているので、駅周辺だけでひと通りの買い物をすませることができます。

 

駅南口をみていきましょう。駅前に大きなバスターミナルがあり、東口よりもひらけた印象です。周囲は雑貨ビルが建ち並び、1階を中心にお馴染みのチェーン店が並ぶほか、志木街道沿いには大型ショッピング施設「イオン」も。

 

また「志木」周辺には、東口に慶應義塾志木高校、南口に立教大学新座キャンパス、立教新座高校があり、学生の姿が目立ちます。「志木」周辺に多くのチェーン店が集積するのは、このような若者をターゲットにしていることが一因だと考えられます。大型の商業施設もあり、にぎわいをみせている「志木」ですが、強烈な個性を感じさせる街ではありません。その分、使い勝手の良さはにじみ出てくる街だといえるでしょう。

東上線沿線でも随一の住みやすさ

そんな「志木」駅周辺の家賃水準をみていきましょう。駅から徒歩10分圏内の1Kの平均家賃は4.25万円、11分を超えると4.29万円となっています(図表1)。駅から離れたほうが新築物件や専有面積の広い物件が多くなり、家賃水準を押し上げているようです。同条件の新座市の家賃水準は、駅10分圏内4.88万円、11分越えで4.44万円。一方、志木市の家賃水準は、駅10分圏内4.05万円、11分越えで4.30万円。「志木」駅周辺は、駅所在地の新座市のなかでは家賃水準の低いエリアですが、志木市で比較すると家賃水準の高いエリアになります。

 

出所:公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合 会調べ(5月11日時点) ※単位は万円
[図表1]「志木」駅周辺の平均家賃 出所:公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合
会調べ(5月11日時点)
※単位は万円

 

厚生労働省が発表している「賃金構造基本統計調査」によると、都内勤務の男性会社員の平均月給は、25~29歳で27.5万円、30~34歳で34.1万円、埼玉県勤務で25~29歳で24.8万円、30~34歳で28.6万円となっています(図表2)。企業規模によって平均給与は異なりますが、そこから住民税や所得税などを差し引いた手取り額の1/3以内を適正家賃と考えると、都内勤務20代後半は6.9万円、埼玉県勤務は6.2万円、都内勤務30代前半は8.5万円、埼玉県勤務は7.1万円となります。

 

出所:厚生労働省「賃金構造基本統計調査 」 ※10名以上の企業対象 ※数値は所定内給与額 ※単位は万円
[図表2]20代後半、30代前半の平均月給 出所:厚生労働省「賃金構造基本統計調査 」
※10名以上の企業対象
※数値は所定内給与額
※単位は万円

 

「志木」駅周辺は、都内勤務でも埼玉勤務でも、20代の若手会社員が駅チカの利便性を享受できる家賃水準の街です。大手ポータルサイトで検索すると、適正家賃内の物件数は豊富ですが、駅10分圏内では新築、または築浅の物件は極端に少なくなっています。物件の築年数にこだわるなら、街のにぎわいを抜けた、徒歩11分越えのエリアを探すといいでしょう。

 

次に交通の利便性をみてみましょう。「志木」は東武東上線の駅ですが、東上線は相互乗り入れの多い路線で、乗り換えなしに多くの街にアクセスすることができます。「志木」から「池袋」は急行利用で23分。東京メトロ副都心線直通で「新宿三丁目」38分、「渋谷」45分。さらに東横線直通で、横浜方面までダイレクトにアクセスできます。また東京メトロ有楽町線直通で「飯田橋」44分、「有楽町」55分と、都心方面へのアクセスも抜群です(所要時間は平日8時に「志木」駅を出発した場合の目安)。

 

生活の利便性をみていきましょう。東口の「マルイ」南口の「イオン」のほか、深夜まで営業の「カスミ フードスクエア」「TAIRAYA」、24時間営業の「Big-A」など、「志木」駅周辺は、時間を気にせず買い物ができる環境が整っています。また「成城石井」や「北野エース」など、普段よりも上質なものを買いたいときに重宝するスーパーも。ドラッグストアなど、日常使いのチェーン店も多く、最寄り品の購入で困ることはありません。

 

また駅周辺には、ファストフードやファミリーレストラン、牛丼店、定食店など、お馴染みの店が集積しているから、外食の多い単身者でも安心です。また居酒屋などのチェーン店も多く、気軽に飲んでから帰ることができる街です。

 

交通利便性が高く、お馴染みの店が集積がする「志木」は、使い勝手はいい反面、これといった個性のない街と揶揄する人もいます。たしかに誰もが知るチェーン店の多い駅前に、個性を見つけるのは難しいかもしれません。しかしどこかの地方の繁華街のような雰囲気に、安心感を覚える人も多いでしょう。「志木」は、街の個性よりも住みやすさを追求する人に、ぜひすすめたい街です。

 

GGOとは、GENTOSHA GOLD ONLINE(幻冬舎ゴールドオンライン)の略称。『あなたの財産を「守る」「増やす」「残す」ための総合情報サイト』を掲げ、企業オーナー・富裕層を主要読者ターゲットとして運営している(写真は編集長の立本正樹)。

著者紹介

連載データから紐解く「住みやすい街」

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