4月になって金価格が大きく上昇している
新型コロナウイルスの感染拡大によって2月以降、世界的に金融マーケットが混乱しています。NYダウや日経平均株価といった株価指数が下落し、為替相場でも当初は「リスク回避の円買い」が進み、ある時期からは「有事のドル買い」となって、まさに「緊急事態」の様相です。
4月第4週(20日~24日)の金融マーケットにおいて、最大のトピックはとたずねると、多くの人が「原油価格が史上初めてマイナスになったこと」を挙げるでしょう。20日(月)のNY原油先物5月限(WTI)の終値は1バレル=-37.63ドル(前営業日比-55.90ドル)となり、史上初めてマイナス価格で取引を終えました。つまり「お金を払うから、原油を引き取ってくれ」ということです。
これには、5月限の売買最終日を翌日に控えていたという要因もあり、異常値との見方は少なくありませんが、いずれにせよ「普通ではない話」です。
このような中、4月になって大きく値を上げている金融商品があります。それは金(ゴールド)です。
ニューヨーク金先物相場は23日(木)まで、4日続伸となっています。ニューヨーク商品取引所(COMEX)でNY金先物6月限(COMEX)の終値は1オンス=1,745.40ドル(+7.10ドル)となりました。約7年半ぶりの高値水準です。
ゴールドマンは1年後に金価格1,800ドルを予想
金価格が上昇している背景として、さまざまな要因が重なり合っているようです。
1つ目は各国の中央銀行が新型コロナウイルスの感染拡大で経済が失速していることを受け、こぞって金融緩和を進めていることが挙げられます。米国をはじめ、先進国では「実質ゼロ金利」のところが増えています。
つまり、米ドルに資金を置いていても金利がつかないことになります。これは金相場が選好される大きな理由になります。金は持っているだけでは金利がつかないため、米ドル資産を持っているよりも安全資産の金に資金がシフトするきっかけとなります。
また、金融緩和が進められて、各国の中央銀行から大量に市場へと資金が供給され、その資金の受け皿の1つになっているとも考えられます。本来であれば、原油、鉄鉱石、石炭など他のコモディティ(商品)にも資金が流れるのでしょうが、原油価格の変動(ボラティリティ)が大きく、安心して資金を置いておけません。この点で、金には安心感があります。
もちろん、新型コロナの影響で経済の先行きを見通すことができず、リスク資産から安全資産の金に資金が入っているという解説も正しいです。平時の相場における一時的なリスク回避局面では、資金は債券や、鉄道・電力株といった景気変動の影響を受けにくいところに「退避」するのですが、過度のリスク回避(恐怖状態)になると、米ドルなどに現金化されます。しかし、現金ですべて保有しているのもリスクであり、金に資金が流れます。
なお、ニューヨーク証券取引所に上場されている世界最大規模の金のETF「SPDRゴールド・シェア」現物保有量が、4月13日に1,000トンの大台を突破したことが話題になっています。2013年5月21日の1,023.08トン以来、約7年11カ月ぶりの高水準です。金に資金が大量に流れ込んでいることがわかります。
米国の金融大手ゴールドマン・サックスは3月下旬に発行したレポートで、新型コロナウイルスのパンデミックで市場がパニックにある今、安全資産である金を購入すべきだと顧客に推奨しました。金は変曲点にあり、ゴールドマンによる1年後の目標水準である1,800ドルの達成について、ますます自信を深めているとコメントしています。金価格の先高期待は、しばらく広がっていきそうです。
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