前日の欧米市場に続いて、4月23日(木)の日経平均株価も上昇しています。好ムードのようですが、米国株高の材料とされた原油価格の上昇については在庫統計で芳しくないデータも示されています。為替相場に目を転じると、ユーロ相場にも下落リスクがあるようです。それぞれのマーケットについて考察します。

原油価格の上昇で欧米市場では株価が上昇

4月23日(木)の東京株式市場では、日経平均株価は4営業日ぶりに反発して取引を開始しています。前日の欧米市場で株価が上昇したことから、リスク回避のムードがひとまず和らいでいるようですが、寄り付きからは上げ幅を縮小する場面もあり、上値での売り圧力も相応にありそうです。

 

22日(水)の米国株式市場では、NYダウは23,475.82ドル(前日比+456.94ドル)で取引を終え、2%ほど上昇しました。米国の複数の州において経済活動の制限を緩和する動きが広がったため、投資家心理が良化したとのことです。

 

加えて、サウジアラビアが一段の協調減産に向けて準備をしていると伝えられ、原油市場の需給改善への思惑が広がりました。

 

欧米株式市場の上昇を受けて、東京市場もリスク回避ムードが和らいでいる。
欧米株式市場の上昇を受けて、東京市場もリスク回避ムードが和らいでいる。

 

原油先物市場では、NY原油先物6月限(WTI)は1バレル=13.78ドル(前日比+2.21ドル)、ブレント先物6月限(ICE)は1バレル=20.37ドル(+1.04ドル)と上昇しました。一部では中東情勢が緊迫化するとの見方があり、これも原油先物の上昇につながりました。

 

なお、毎週水曜日に発表される米国の週間石油在庫統計では、原油は前週比+1,502.2万バレル(在庫総量:5億1,864万バレル)、ガソリンは同+101.7万バレル(在庫総量:2億6,323万バレル)、留出油は+787.6万バレル(在庫総量:1億3688万バレル)となっており、引き続き在庫が増えています。この日の原油価格は上昇していますが、この統計から判断すると備蓄は満タンに近いと考えられ、先物市場での急落リスクは注意したいところです。

ユーロ円は日足でも月足チャートでも下落トレンド

為替相場において、ユーロ円に値動きが出てきています。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため在宅勤務者が増え、空いている時間にFX(外国為替証拠金取引)をトレードする人が増えているようですが、米ドル円はこのところ、値動きがこう着しています。この点で、ユーロ円には動きがあります。

 

ユーロ円・日足チャート 【提供:楽天証券マーケットスピードⅡ】
ユーロ円・日足チャート
【提供:楽天証券マーケットスピードⅡ】

 

ユーロ円は新型コロナウイルスの感染拡大が世界的に広がり、経済への悪影響が懸念され始めた2月以降、116円~121円台前半の水準でレンジ相場になっています。23日(木)10時時点では116.50円近辺に位置し、このレンジ相場の下限にあります。

 

仮に、116円~121円台前半の水準でレンジ相場が続くとみるならば、足もとの116.50円近辺は「買い」を入れて、リバウンドを期待するところです。

 

しかし、3月下旬につけた高値の121.15円から、それぞれの戻り高値をつないだレジスタンスライン(上値抵抗線)を引いてみると、116円割れもありそうです。目先では、2019年9月につけた115.86円という安値がありますが、ここを下抜けると下落トレンドが加速することも考えられます。

 

ユーロ円・月足チャート 【提供:楽天証券マーケットスピードⅡ】
ユーロ円・月足チャート
【提供:楽天証券マーケットスピードⅡ】

 

下落トレンドは、ここ2~3カ月の話だけではありません。長期スパンでみると、ユーロ円は月足チャートでみても1本のレジスタンスラインを引くことが可能で、それぞれの戻りの局面でこのラインに上値を阻まれています。

 

新型コロナウイルスの感染拡大で経済に悪影響があるのは欧州だけではありませんが、米国や中国に比べると、回復には時間を要するとの見方は根強くあります。EU(欧州連合)やECB(欧州中央銀行)の決定には複数の国の同意が必要であり、経済再開の方向へかじを切ろうとしても温度差はかなりあります。

 

とりわけ、もともと過剰債務に苦しむイタリア、ギリシャなど南欧諸国の建て直しには相当の労力が必要と考えられます。

 

今回はユーロ円をみてきましたが、ユーロ相場は対米ドルなど他の主要通貨に対しても弱含む展開となりそうです。先に説明した原油価格も、ユーロ相場も急落のリスクに備えるべきでしょう。

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、著者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

 

 

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