1~3月期の東京都は23区・都下ともに低下した
不動産情報サービスのアットホームでは、地域に根差して不動産仲介業に携わるアットホーム加盟店を対象にした、全国13都道府県の居住用不動産流通市場の景気動向をまとめました。このほど、「地場の不動産仲介業における景況感調査」(2020年1~3月期)として公表しています。
調査期間は3月12日~26日で、対象地域は北海道、宮城県、首都圏(1都3県)、静岡県、愛知県、近畿圏(2府1県)、広島県、福岡県のアットホーム加盟店のうち、都道府県知事免許を持ち、5年を超えて仲介業に携わっている不動産店です。
アットホームは、調査初日に52%、東京オリンピック・パラリンピックの延期が決定した3月24日までに98%の回答が集まったと報告しています。当該期間は新型コロナウイルスが全国に拡大し始めた時期でもあり、これらの影響を大きく受けたようです。
まずは、首都圏・近畿圏の業況についてみてみます。賃貸仲介における今期の業況DIは、首都圏は43.6で前期より-1.3ポイントとなりました。19年I期以降、4期連続でゆるやかに低下した結果、前年同期比では-6.1 ポイントと大幅な落ち込みです。
近畿圏は40.7で前期比-2.5ポイントと 3期連続の低下となり、前年同期比も-6.9 ポイントと大幅な低下です。1~3月期では調査開始以来、最低値となりました。
来期の見通しDIは、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、首都圏・近畿圏ともに今期業況DIより15ポイント以上と大幅に落ち込む予想となりました。
調査対象14エリアにおける今期の業況DIは、7エリアで前期比低下、3エリアで上昇、4エリアでほぼ横ばいとなり、1~3月期において調査開始以来最低値となったエリアが6エリアとなりました。首都圏の5エリアでは千葉県が前期比上昇する一方、東京都は23区・都下とも前期比低下しました。近畿圏の3エリアではいずれも低下傾向が続いており、来期見通しDIは全エリアで20台にまで落ち込んでいます。
来期の見通しDIは賃貸・売買ともに大幅に落ち込んだ
来期の見通しDIは、賃貸・売買ともに今期業況DIよりも大幅に落ち込みました。回答の内訳をみてみると、賃貸では「やや悪くなる」が40.6%で最も多く、次いで「悪くなる」30.4%、「前年並み」23.5%。売買は「悪くなる」が38.3%で最も多く、「やや悪くなる」35.3%、「前年並み」20.4%と続きました。
不動産店に見通しの回答理由を質問したところ、「新型コロナウイルスの影響がかなり未知数で問い合わせも減るのではないかと思われる(広島市)」など、エリアを問わずほとんどの不動産店が新型コロナウイルスの感染拡大を要因に挙げました。
また、回答内訳をエリア別に比較してみると、北海道の「悪くなる」と「やや悪くなる」の回答割合が賃貸・売買ともに他エリアより大きくなっており、調査期間前の2月28日にひと足早く「緊急事態宣言」が発令された影響が反映されたと、アットホームでは分析しています。
新規問い合わせ減少や商談取りやめなど影響が出ている
不動産店からのコメントによると、来期の見通しだけでなく、3月時点の取引においても新型コロナウイルス感染拡大の影響が現れているとみられます。
とりわけ、3月は本来ならば転勤などで引っ越しの多い時期であり、地域の不動産仲介業者は1年でも最も忙しいときです。しかし、新社会人や新大学生など「3月でなければならない」人以外、企業の転勤は手控えられているようです。
以下に挙げたのは、特徴的なキーワードとコメントです。
●新規問い合わせの減少
賃貸取引では「3月に入ると新型コロナウイルスの影響か学生以外の反響が激減した(さいたま市)」、「新型コロナウイルスの感染拡大により企業が転勤時期を見送っている。引っ越しを検討している方も外出を控えているようで来店が減っている(広島県安芸郡)」。以上から、新社会人や新大学生など、時限の決まった転居以外の新規問い合わせが減少しているもよう。
売買取引では「新型コロナウイルスの影響もあり、オープンハウスへの来場者数も少ない(福岡市)」など、新規問い合わせ数だけでなく、販売現場への来場者数も減少しているもよう。
●商談の取りやめ
「新型コロナウイルスの影響で会社から補助金が出なくなったからと、契約直前にキャンセルになった(東京都港区)」、「新型コロナウイルスの影響で転勤客のキャンセルが3件あった(東京都江戸川区)」など、新規問い合わせだけでなく、すでに進んでいた商談が取りやめになる例も多くあったもよう。
●賃貸管理業
賃貸管理業を主とする不動産店からは、不急の転居が控えられた現状について「急いで部屋探しをしている人が少なくなり、更新が増えた気がする(東京都調布市)」との声がある一方、「入居者の入替えがなく満室状態が続くのが良いことなのか判断がつかない(東京都新宿区)」と戸惑う声も聞かれた。
●売却
売買取引では「景気の衰退や新型コロナウイルスの影響で建物完成時期が不確定な状態のため、不動産の買い控えが起きている(東京都杉並区)」、「新型コロナウイルスの影響で高くは売れないだろうという憶測から売り控えの状態(東京都豊島区)」など買い控えや売り控えを指摘する声もある一方、「景気減退の不安から駆け込みでの売却査定依頼が増えた(東京都千代田区)」など、不動産価格の低下を見越して売却を急ぐケースもあるもよう。
●部材の納期遅延
新築物件やリフォームを必要とする物件についても、「新型コロナウイルスの影響で建物の部材が入らず、新築物件の需要が減った(神奈川県藤沢市)」、「キッチン・トイレなどが手に入らなくなり、リフォームも伴うような古めの中古物件は当面売買できない(大阪府藤井寺市)」といった声が多く、部材の納期遅延が取引に影響を及ぼしているもよう。
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