成功したオーナー経営者も、いずれは引退を考えなければなりません。そのときに課題となるのが、事業とお金をいかに残し、次代に受け継ぐかです。連載第1回目は、株価をコントロールする方法について見ていきます。

定番は退職金・生命保険・太陽光発電などの活用

事業承継において、株価のコントロールは最も重要です。自社株の評価には、高い時期と低い時期があります。高い時期に相続が発生すると、高額な相続税負担が生じ、その後の経営に悪影響を及ぼしかねません。

 

事業承継を考え始めたら、株価のコントロールを行いつつ、評価が下がったタイミングで後継者に移転することが重要です。

 

自社株の評価にもっとも大きな影響を及ぼすのは会社の利益です。利益が高ければ評価は高くなりますし、業績が悪ければ評価が下がります。

 

この仕組みを利用して一時的に業績を下げて、株価をコントロールする方法があります。たとえば、オーナー経営者の引退時に高額な役員退職金を支払えば、会社の利益は大幅に減少しますから、自社株の評価を下げることができるのです。

 

同様に生命保険に加入して保険料を経費処理する方法もありますし、最近は太陽光発電設備の導入を利用した方法も話題になりました。

 

外部環境を上手に利用して評価を下げることもできます。自社株の評価は株式市場全体の環境にも大きく影響されます。株式市場全体が上がっていれば、自社株の評価も上がりますし、株式市場全体が下がっていれば、自社株の評価も下がります。

 

株式市場の行方を判断するのは簡単ではありませんが、長期で事業承継対策を行っていれば、株式市場全体が下がることもあるはずです。そのタイミングを逃さずに株価コントロールを行えば、何の対策も必要なく自社株の評価を下げることができます。

会社の状況等が変わると評価方法も変わってしまう

逆に評価が急激に上昇してしまうこともあります。

 

自社株の評価方法には、主に類似業種比準方式と純資産価額方式があります。類似業種比準方式は業種の似た上場会社の株価を参考に計算する方法で、純資産価額方式は会社の保有する資産をベースに株価を計算する方法です。

 

小規模な会社であれば、主に類似業種比率方式を50%、純資産価額方式を50%使い株価を計算します。

 

利益が2期連続で出ていないような場合、株価は下がりそうですが、実際には急激に増加したケースもありました。利益が出ていないことにより、大会社でも類似業種比準方式を使える割合が25%に下がり、75%が純資産価額方式の評価になったためです。

 

つまり、会社の規模や状況に変化があったときには、自社株の評価方法も変わり、評価額が大きく変わることもありますので、その変動に注意しておくことも大事なのです。

本連載は、2015年9月2日刊行の書籍『財を「残す」技術』 から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

財を「残す」技術

財を「残す」技術

齋藤 伸市

幻冬舎メディアコンサルティング

成功したオーナー経営者も、いずれは引退を考えなければいけない。そのときに課題になるのが、事業とお金をいかに残し、時代に受け継ぐかである。 保険代理店業を主軸として、オーナー社長の資産防衛と事業承継をコンサルティ…

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