前回は、「ホールディングス化」によって自社株の高騰を抑える仕組みについて説明しました。今回は、中小企業投資育成株式会社法による「投資育成」の概要などを見ていきます。

中小企業の経営をバックアップしてくれる「投資育成」

事業承継の際の相続税を軽減する方法のひとつとして、投資育成を利用する方法があります。投資育成は、中小企業投資育成株式会社法によって設立された会社で、中小企業に出資することで長期安定株主になり、中小企業の経営をバックアップしています。

 

出資を受ける会社は、増資をしてその分を投資育成に引き受けてもらいますので、結果的にオーナー経営者の株式の持ち分比率を下げる効果があります。自社株の相続税評価を下げる効果があるのです。

投資育成の活用で株式評価額が高くなってしまうことも

とはいえ、投資育成の本来の役割は相続税を軽減することではありませんから、相続のときだけ出資を受けて、節税効果だけを狙うのは租税回避行為とみなされ、否認される可能性があります。ある程度の長期で出資を受ける中で、結果的に相続税の軽減にもつながったという形にする必要があります。

 

また、出資を受けた会社は一般的に、年6%程度の配当を行わなければなりません。たとえば、1億円の出資を受けると、毎年600万円の配当を行うことになります。配当は経費にできませんから、600万円の配当を支払うためには税金分も含め1000万円程度の利益が必要となります。

 

1億円の出資を受けて、年間1000万円の利益を還元するわけですから、毎年10%以上の利益が得られなければ意味がないということになります。

 

また、配当を支払うことによって株式の評価額が高くなってしまうケースもあります。出資を受けてオーナー経営者の株式の持ち分を減らしても株式の評価が上がってしまったのでは意味がありませんので、慎重に検討する必要があります。

本連載は、2015年9月2日刊行の書籍『財を「残す」技術』 から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

財を「残す」技術

財を「残す」技術

齋藤 伸市

幻冬舎メディアコンサルティング

成功したオーナー経営者も、いずれは引退を考えなければいけない。そのときに課題になるのが、事業とお金をいかに残し、時代に受け継ぐかである。 保険代理店業を主軸として、オーナー社長の資産防衛と事業承継をコンサルティ…

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