役割の終わった会社は「早め」に整理をしておく
オーナー企業でも、会社の数が必要以上に多くなってしまい、管理上の弊害や事業承継上の弊害をもたらすケースがあります。たとえば、建設業などの場合、公共事業の入札に参加する際、その市区町村に事業所がなければ参加資格を得られない場合があります。
そのようなときには、入札を行うための会社を設立することになります。その仕事が終わってしまえば、会社も役割を終えますので、休眠状態の会社がいくつもできてしまうようなことが起こり得ます。
役割の終わった休眠会社のA社からB社へ資金を移動したいと考えた場合、互いに別会社ですから、簡単に資金移動をすることはできません。A社からB社へ貸付金という形で資金移動をすることになります。
B社は資金繰りが厳しいためにA社の資金を利用したにもかかわらず、当然ながらA社に利息を支払わなければなりません。利息は経費にすることができますが、B社は利益が出ていないのであれば、税務上のデメリットが生じてしまうことになります。
一方でA社も利息を受け取るので、その利益に対して税コストが発生します。同一グループ内の会社同士の資金融通であるにもかかわらず、余計なコストがかかってしまう可能性があるのです。
このような状態のまま事業承継をしてしまうと、後継者は事情がわからないので、休眠会社を整理してよいのかどうかわかりません。ですから、役割の終わった会社があれば、早めに整理をしておくことが必要です。
整理の手段としては、清算してしまってもいいですし、会社を合併させて一つにする手法もとれます。合併させることで株の引き下げ効果も得られることも少なくありません。
たとえば二つの会社がある場合、それぞれ別に株式の評価をしなければなりません。会社の株価の評価の方法には純資産価額方式と類似業種比準方式があることは、連載第4回で説明しました。
純資産価額方式は、保有している資産を丸ごと評価しますので、評価額が高くなりがちです。類似業種比準方式は、その会社の収益力がどのくらいなのかを評価しますので、評価額を比較的低く抑えることができます。
会社の規模が大きい方が類似業種比準方式を使える比率が大きくなります。よって、合併して会社の規模を大きくすることは株式の評価引き下げに役立つことになります。
一般社団法人に自社株を売却し、相続税の心配をなくす
一般社団法人を活用して、自社株を相続財産から切り離すという対策が話題になっています。最近では、税理士会で研修が行われるほどです。
一般社団法人の特徴は、持ち分という概念がないことです。株式会社であれば、株主が所有している株式の比率によって持ち分が決まります。しかし、一般社団法人にはこのような概念がないため、誰かの持ち物ではなく、人の集まりである社団が法人格を有してただ存在している、という状態になります。
株式会社のように「誰かの持ち物」であれば、相続の際にはその持ち分を評価しなければなりません。しかし、一般社団法人のように持ち分がなければ、現在の規定では、相続財産として評価されないことになっています。
たとえば、オーナー経営者が一般社団法人に自社株を売却すれば、その自社株は個人の財産から切り離すことができるので、その後に相続が発生しても相続税の心配はありません。