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製造業購買担当者景気指数(PMI)などGDP成長率に先行する指標が大幅に悪化(足元は急回復)していただけに中国の成長率の低下は想定していたものの、公表された数字を目にすると、改めて歴史的なイベントに直面している思いを強くします。現在の局面における経済指標を評価する上での注意点を踏まえながら今回のデータのポイントを述べます。

20年1-3月期中国成長率:前年同期比でマイナス6.8%と、統計上初の縮小を記録

中国国家統計局が2020年4月17日に発表した20年1-3月期の実質GDP(国内総生産)成長率は前年同期比でマイナス6.8%と、市場予想(マイナス6.0%)を下回り、前期(プラス6.0%)から大きく落ちこみました(図表1参照)。四半期の成長率(前年同期比)としては、記録が残る1992年以降で初めてのマイナスとなりました。

 

なお、同日に公表された中国の3月小売売上高は前年同月比マイナス15.8%と、市場予想(マイナス10%)を下回りました。鉱工業生産は前年同月比マイナス1.1%と、市場予想のマイナス6.2%程は悪化しませんでした。1-3月の固定資産投資は前年同期比マイナス16.1%と、市場予想のマイナス15.0%に比較的近い数字となりました。

 

四半期、期間:1992年1-3月期~2020年1-3月期、前年同期比
[図表1]中国のGDP(国内総生産)成長率の推移 四半期、期間:1992年1-3月期~2020年1-3月期、前年同期比

どこに注目すべきか:中国GDP、マイナス成長、市場予想、全人代

製造業購買担当者景気指数(PMI)など成長率に先行する指標が既に大幅に悪化(足元は急回復)していただけに中国の成長率の低下は想定していたものの、公表された数字を目にすると改めて歴史的なイベントに直面している思いを強くします。現在の局面における経済指標を評価する上での注意点を踏まえながら今回のデータのポイントを述べます。

 

まずGDP成長率は前年同期比マイナス6.8%と市場予想を下回りました。通常なら市場予想との比較を重視し、市場予想を下回れば「悪かった」と判断する傾向があります。過去のデータを判断基準に今後の動向を占う場合、現在の歴史的急落局面では予測の幅も大きく、解釈に幅を持たせることが必要と考えます。例えば、成長率を占う上では中国のリアルタイムのエネルギー使用量などで補完的に状況を把握しながら予想を調整することが必要と考えています。

 

次に、中国の今後の動向を占う上では重視する指標としては投資、今回の指標では固定資産投資(図表2参照)が大切と見ています。需要を反映する小売売上高や、海外需要にも左右される鉱工業生産より、直接影響(介入)しやすいと見られるからです。固定資産投資の中でもインフラ投資が公的投資の中心で、3月は不動産投資が2月と比べ横ばいであったのに比べ、低水準ながらペースは改善しました。今後の持続性に注目しています。

 

一方、鉱工業生産はマイナス1.1%と「健闘」しました。先の中国のリアルタイムデータなどから、工場などはざっくり8割程度回復したと見られ、経済活動の再開に伴い、取り急ぎの受注を受け強い数字が出た可能性があります。しかし、本格的な回復には外需の回復を待つ必要があると思われます。

 

需要を示唆する小売売上高は軟調で、新型コロナウイルス感染が蔓延した湖北省でも3月後半には封鎖解除の動きがあるなど中国に再開の動きはあった3月ですが、失業率も軟調と見られ、消費マインドの回復に時間が必要と思います。

 

今回の指標を受け、当面は中国当局が繰り出すと想定される対応策に注目しています。しかし最大の関心は、3月5日から延期されている全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の開催と、そこで示される今後の政策方針と見ています。

 

月次、期間:2015年3月~2020年3月期、前年比 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]中国の固定資産投資と主な構成項目の推移 月次、期間:2015年3月~2020年3月期、前年比
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『歴史的なマイナス成長となった1-3月期中国GDP』を参照)。

 

(2020年4月17日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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