投資のプロフェッショナルである機関投資家からも評判のピクテ投信投資顧問株式会社、マーケットレポート・ヘッドライン。日々のマーケット情報を専門家が分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

調査官は重加算税をかけたがる
税務調査を録音することはできるか?
4/17(水)>>>WEBセミナー

 

メキシコはこの1ヵ月ほどの間に主な格付け会社3社から格下げされました。新型コロナウイルスと原油価格の下落で新興国の格下げが続いていますが、3社からの格下げとなると、他の国ではアルゼンチンやエクアドルなどしか思いつきません。このような背景を受け、メキシコの通貨ペソは下落傾向で信用力も悪化しています。

メキシコ格付け:過去1ヵ月の間に、3大格付け会社が揃って格下げ

ムーディーズ・インベスターズ・サービス(ムーディーズ)は2020年4月17日にメキシコの長期債格付け(自国通貨建て、外貨建て共に)をA3(A-に相当)からBaa1(BBB+に相当)に格下げしました。見通しは弱含み(ネガティブ)です。

 

なお、メキシコの格付けについては、フィッチ・レーティングス(フィッチ)が4月15日にBBBからBBB-に、S&Pグローバル・レーティング(S&P)も3月26日に自国通貨建て長期債格付けをA-からBBB+に格下げするなどしています。

どこに注目すべきか:メキシコ格下げ、自動車生産、ジャンク債

メキシコはこの1ヵ月ほどの間に主な格付け会社3社から格下げされました。新型コロナウイルスと原油価格の下落で新興国の格下げが続いていますが、3社からの格下げとなると、他の国ではアルゼンチンやエクアドルなどしか思いつきません。このような背景を受け、メキシコの通貨ペソは下落傾向で信用力も悪化しています(図表1参照)。格下げの要因として次の点が指摘されています。

 

まず、新型コロナウイルスの影響です。特にメキシコの場合、主力産業である自動車生産に影響が見られ始め、3月の自動車生産は前年同月比でマイナス24.6%でした。フィッチはさらなる悪化を見込んでいます。

 

なお、メキシコの感染者数は世界保健機関(WHO)によると、足元7,000人弱ですが、メキシコの100万人あたりの検査を受けた人の数は160人程度と、以前当レポートで検査の少なさを指摘したブラジルの260人程度をさらに下回っておりメキシコの感染拡大の実態は不透明です。

 

次に原油価格下落の影響です。メキシコは大半の歳入を石油に依存する中東やアフリカの産油国とは異なります。それでも、国営石油会社(ぺメックス)支援の財政負担が重くなっています。なお、ムーディーズはぺメックスの社債格付けをBa2(BBに相当)へ2段階引き下げ投資不適格としました。ムーディーズはメキシコ政府の財政負担が対GDP(国内総生産)比で2%程度が22年迄毎年必要と見込んでいます。

 

S&Pやムーディーズが指摘するのがメキシコの中期的な経済成長率の見通しが悪化したことです(図表2参照)。例えば、ムーディーズが14年にメキシコをA格に引き上げたとき、構造改革などへの期待から潜在成長率は3%程度を見込んでいましたが、(恐らくコロナウイルスがある程度落ち着く)21年から23年にかけて成長予想は良くて2%と見ています。原因は現政権の一貫性の無い政策によりビジネスマインドが萎縮したためと指摘しています。例えば、18年10月に唐突にメキシコシティ空港の建設を中止したこと、再生可能エネルギーや天然ガスパイプライン建設でも、民間企業の役割が不明確としたため投資は敬遠されました。最近では、既に建設が開始されていたビール工場のプロジェクトが中止されています。投資家の信頼回復は容易でないと見込まれています。

 

メキシコの格付けはフィッチのBBB-が最も低くなっていますが、フィッチは見通しを安定的としており、南アフリカのような投資不適格債となる懸念は低いと思われます。ただ債務残高は警戒水準に近づいており、信頼回復が求められます。

 

日次、期間:2019年4月17日~2020年4月17日、bp=0.01% ※信用力;CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)は信用リスクを対象としたデリバティブ商品のことでスプレッド上昇(低下)は信用力悪化(改善)の目安 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]メキシコペソ(対ドル)と信用力の推移 日次、期間:2019年4月17日~2020年4月17日、bp=0.01%
※信用力;CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)は信用リスクを対象としたデリバティブ商品のことでスプレッド上昇(低下)は信用力悪化(改善)の目安
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

四半期、期間:2012年1-3月期~2019年10-12月期、前年同期比 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]メキシコのGDP(国内総生産)成長率の推移 四半期、期間:2012年1-3月期~2019年10-12月期、前年同期比
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『メキシコに相次ぐ格下げの理由』を参照)。

 

(2020年4月20日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

【3/27開催】遺言はどう書く?どう読む?
弁護士が解説する「遺言」セミナー<実務編>

 

【3/27開催】いま「日本の不動産」が世界から注目される理由
~海外投資家は何に価値を見出すのか

 

【3/27開催】「マイクロ法人」超活用術
~法人だからできる節税とは~

 

【3/28開催】「相続手続き」完全マスター講座
~相続人調査、財産調査、遺産分割協議~

 

【3/30開催】次世代のオルタナティブ投資
「プライベートクレジット投資」とは

あなたにオススメのセミナー

    【ご注意】
    ●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
    ●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
    ●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
    ●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
    ●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
    ●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
    ●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
    ●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
    ●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

    人気記事ランキング

    • デイリー
    • 週間
    • 月間

    メルマガ会員登録者の
    ご案内

    メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

    メルマガ登録
    会員向けセミナーの一覧
    TOPへ