居酒屋業態の3月月次は相当厳しい状況
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う自粛要請で、大きな影響を受けているのが外食業界です。とりわけ、夜の時間帯にアルコールを提供するような店舗は営業休止を要請されたり、営業しても19時以降のアルコールの提供を取りやめるといった対応をとるところがほとんどです。
自粛ムードが広がった3月~4月というタイミングは、本来であれば、年度替わりで歓送迎会があったり、桜の開花で花見の需要が多く、言わば「稼ぎ時」です。この時期に店を開けられないとか、営業時間を短縮しなければならないというのは、経営に大きな痛手でしょう。
次に示すのは、居酒屋業態やバー、パブ業態の店舗を展開する各社の直近3カ月における月次データです。いずれも前年同月比となります。
3月:既存店売上高22.6%減、全店売上高5.3%減
2月:既存店売上高2.9%増、全店売上高31.4%増
1月:既存店売上高17.4%増、全店売上高45.7%増
3月:既存店売上高16.1%減、全店売上高18.4%減
2月:既存店売上高0.4%増、全店売上高0.6%増
1月:既存店売上高0.1%減、全店売上高7.5%増
3月:既存店売上高39.2%減、全店売上高36.3%減
2月:既存店売上高3.6%減、全店売上高1.8%増
1月:既存店売上高7.5%減、全店売上高2.5%減
3月:既存店売上高41.2%減、全店売上高47.8%減
2月:既存店売上高4.8%減、全店売上高9.9%減
1月:既存店売上高1.4%増、全店売上高4.5%減
3月:既存店売上高40.4%減、全店売上高39.5%減
2月:既存店売上高1.2%増、全店売上高0.9%増
1月:既存店売上高6.7%増、全店売上高6.8%増
いずれも、2ケタの大きな下振れとなっています。不祥事があったわけでもなく、それなのに4割減という数字は過去を振り返ってもなかったことです。
コンビニ各社の3月月次も下振れたが小幅に
居酒屋業態が不振ということは、そのほかのどこかが、居酒屋で飲食していたはずの人々の胃袋を「代わりに」満たしているはずです。その1つが住宅街にあるスーパーマーケットです。
確かに、スーパー各社の業績は良いようです。4月15日、スーパー「ライフ」を運営するライフコーポレーションが、新型コロナウイルスの感染拡大により負担が増えている従業員に、総額3億円のボーナスを出すと各メディアが報じています。業績が好調であり、ボーナスとして社員に利益を還元するそうです。
もう1つが「ウーバーイーツ」や「出前館」といった宅配(デリバリー)業者でしょう。結局のところ、自宅内で食事をしているのです
それでも、スーパーや宅配だけで、すべての需要に応えられるかとなれば、そうでもありません。
スーパーの総菜コーナーはこのところ、夕方には棚がカラになっているとの書き込みがSNSやインターネットのニュースでよく見受けられます。営業時間が短縮となっているため、売り切れても品物を新たに並べることはないようです。
また、配達員の数を増やそうと言っても限界があり、「ウーバーイーツ」や「出前館」がどんどん増えていくかとなれば、これまでのようにはならないかもしれません。
「近くて便利」というフレーズもあるように、頼りになるのはコンビニエンスストアです。
3月既存店売上高3.2%減、全店売上高3.2%減
2月既存店売上高0.8%増、全店売上高5.5%増
1月既存店売上高1.5%増、全店売上高3.0%増
3月既存店売上高7.6%減、全店売上高7.5%減
2月既存店売上高0.9%減、全店売上高1.8%増
1月既存店売上高1.5%減、全店売上高2.0%減
3月既存店売上高5.2%減、全店売上高3.2%減
2月既存店売上高0.4%減、全店売上高0.4%減
1月既存店売上高0.3%増、全店売上高1.2%増
外食(飲食)業態ではありませんが、コンビニ各社もみてみます。いずれも下振れとなりましたが、2ケタ減とはなりませんでした。
このうち、ファミリーマートの月次リリースでは「食品等の買いだめ傾向が高まり、パウチ惣菜や冷凍食品、加工食品など日持ちする商品の売り上げが増加したほか、買い足し需要として玉子、豆腐など日配品が伸長しました」とあります。ファミリー層はスーパーで買い物をして、シングル層はコンビニで買っていると分析できるかもしれません。
持ち帰り弁当店は健闘している
最後に、持ち帰り弁当店をみてみます。
3月:既存店売上高0.8%減、全店売上高6.1%減
2月:既存店売上高12.0%増、全店売上高0.9%増
1月:既存店売上高0.4%増、全店売上高6.1%減
3月:既存店売上高7.3%減、全店売上高7.2%減
2月:既存店売上高2.8%増、全店売上高2.3%増
1月:既存店売上高3.8%減、全店売上高2.3%減
データは2社のみですが、健闘していると言えるでしょう。吉野家、松屋といった牛丼チェーンのテイクアウト、あるいは首都圏などで弁当、総菜の持ち帰り店を展開するオリジン弁当あたりも、最近はにぎわっている印象があります。
以上から、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う自粛ムードで、外食事業を展開する会社はどこも厳しい状況であると、月次データからもうかがえます。その中でも健闘しているのはコンビニ、持ち帰り弁当店ですが、こちらも既存店売上高はマイナスとなっている企業がほとんどです。
好業績と言われるスーパーも、良いとは言っても、月次データが前年同月比で2ケタの上振れというところは見当たりません。
「ウーバーイーツ」や「出前館」は自ら調理するのではなく、既存店舗の品物を配達しているにすぎません。より多くの品物を配達しており、受注を受けた飲食店は業績が良さそうに思いますが、実際は、大手はやはり月次データが前年割れで、街の飲食店は極めて厳しい状況です。
消費者の財布のひもが固くなり、「食」にかけるお金が少なくなっているのかもしれません。
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