前回は、マンションを選ぶ際の留意点を説明しました。今回は、売り手の都合が如実に現れる「モデルルーム」の見方について紹介します。

シアタールームの映像は見る時間すら無駄!?

今回はマンションの販売センターで筆者が感じる疑問点を見ていきます。まずは、大規模マンションによくあるシアタールームです。

 

それは、営業マンが行う周辺環境の説明などの一連の流れの中で、別室に連れられ、10分程度の映像を鑑賞させられるというものですが、その内容の多くはモデルルームを見る前に高揚感をあおり、その気にさせるような映像に仕上がっています。

 

中には映画仕立てで凝った作りのものもありますが、たいていはパンフレット内のイメージヴィジュアルや写真を動画風にアレンジし、イメージキャラクターの女優さんにご登場いただき、キャッチコピーを言わせるパターンが多いようです。

 

ハッキリ言って、これは見る時間すら無駄です。しかも、そのスペースや映像を作るためには相当の費用が必要ですが、そのコストも分譲価格に上乗せされています。

 

シアタールームのあるモデルルームに行く機会があったら、ぜひ、その映像を作るための原価や女優さんのギャラも聞いてみるとよいでしょう。それが1戸あたりいくらの負担になるかを考えれば、一気に冷静になれると思います。

 

また、モデルルーム内の模型やパネルも大規模でお金をかけたものであればよいというものでもありません。シアタールーム同様、費用は購入者の負担になるのですから、無駄にお金をかけず、でも、伝えたいことがわかる、そのような作りになっていると好感が持てると思います。

自信があれば「標準タイプ」を見せるはず・・・

次に疑問に感じるのは、全体では戸数の少ない、角住戸や最上階のペントハウスなどがモデルルームになっている例。モノを売ろうとするわけですから、売主はモノができるだけよく見えるようにと考え、窓が多く条件のよい住戸をモデルルームにしたいのでしょう。

 

モノをよく見せたいという気持ちは誰しもが抱くものであり、理解もできますが、特殊な住戸をモデルルームにするというのはいささか行きすぎです。また、設計変更箇所が多く、元々の間取りがわからなくなっているモデルルームはもはや論外です。

 

正直にマンションを見てもらうとしたら、最も数の多い標準的なタイプの部屋をモデルルームに設定し、評価をしてもらうべきですし、その標準タイプに自信があれば、それができるはずです。

 

そもそも、モデルルームと同じ住戸を買う人の方が少ないのです。であれば、そのマンションの間取りの方針が十分に反映された標準的な間取りを見ていただくのが誠実な姿勢です

 

標準的な間取りのモデルルームを通し、その会社の間取りの方針、先ほどの言葉で言えばアイデンティティを十分に理解した上で、他の間取りを比較すれば、イメージを膨らませながら検討できるようになるのではないでしょうか。

本連載は、2011年3月23日刊行の書籍『本物マンション購入計画』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

本物マンション購入計画

本物マンション購入計画

鈴木 雄二

幻冬舎メディアコンサルティング

人生最大の買い物を間違えたくないと、慎重に選ぶマンション。しかし、誰もがマンション選びの常識と思っている情報が、実は売り手の都合に塗り固められたものだとしたら…。本書の前半では、住み心地よりも効率優先で作られる…

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