床で横になる息子の寝汗が・・・
新居に引っ越して初めての夏。ふと見ると、遊び疲れたのか、2歳になる息子はキレイな木目のリビングの床にごろりと横になり、寝息を立てています。そこへ、風呂上がりの夫が裸足で息子に近寄り、妻に声をかけます。「あんなところで寝ちゃったよ」一見ほほえましい光景にも思えます。
しかし、近づいた息子はしたたかに寝汗をかいています、Tシャツも短パンも湿っぽい。額に浮かんだ汗の粒がぽとりと床に落ちます。「ねえ、あなた、スリッパ」夫は足元を見て、面倒くさそうに頭をかきながら言います。「いいじゃないか、風呂上がりくらい、素足で歩いたって」妻はちょっと厳しい口調になり言い返します。「いいわけないじゃない。後で掃除してくれるの?」
妻は内心むっとしているのです。なぜなら、風呂上がりは足の裏も汗をかいており、その状態でフローリングの上をぺたぺたと歩かれては、足跡がそのまま残ってしまうからです。夫は仕方なしに、スリッパを履いて、再び息子のところへ行き、「ずいぶん、汗をかいている、暑そうだ」と息子を抱き上げながら思うのでした。「どうして息子はこんなに暑苦しい思いをするのだろう」
高温多湿の日本では調湿機能を持つ「木製素材」が最適
多くの人が無意識のうちに木の床と信じているフローリング。それは本当の木ではなく、作る側の効率優先の考えから使われている素材です。選ぶ側も、お手入れラクラクという言葉と見た目の美しさから、ついその説明を受け入れてしまいがちですが、いずれはささくれ立つ可能性があることに加え、実際の生活では、前述のように気持ちの悪いこともあります。
と言うのも、最近は一般的になっているシートフローリングは南洋材のラワンで作った合板の上に、木目を印刷したシートを貼ったもの。そのシートの素材として代表的なものがオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレンなど炭素と水素のみで構成される樹脂の総称で、正式にはポリオレフィン)で、表面はワックスすら弾いてしまうように加工されています。当然、子どもやお父さんの汗をさらりと吸い取るような機能はありません。
しかも、化学物質ですから、知ってしまえば親としてはその上に子どもが直接横になることには抵抗を感じることでしょう。また、水分を弾くということからもわかるように、一般的なフローリングには調湿機能は期待できません。しかし、高温多湿な日本の古来の家が木でできていたことを考えれば、本当は住宅の内装素材には調湿機能も求めるべきでしょう。
人の体感温度には湿度も関係します。湿度が高いと同じ気温でも暑く感じるようになるのです。それを考えれば、室内に使われる素材は湿度を緩やかにコントロールしてくれる自然素材が望ましいのです。
たとえば、木は生きており、呼吸していますから、気候に順応して伸縮をします。夏、湿度が高くなれば内部の気泡に水分を取り込み、室内の湿度を緩やかに下げ、冬は逆に湿気を放出してくれます。その分、木の内部の働きを知らない人からすれば、反ったり、縮んだりするようにも見え、クレームを嫌う企業では採用されないことは前述した通りです。
しかし、住み心地の気持ちよさは、多少の手間やコストには代えられません。自然素材はその特徴をしっかりと理解した上で、マンションで生かされるべきものだと私は考えています。