共有施設を「利用しているか否か」で亀裂が生じる
前回の続きです。
前回、マンションの豪華な共有施設が持つデメリットを説明しましたが、もちろん、そうした施設を使うことで楽しい毎日が送られれば、その金額に見合う価値があると思えます。
しかし、そうではない場合もあり得ます。人によっては施設があっても使わないこともあります。そうなると、マンションという特殊環境では金銭面以外の問題に発展する恐れも出てきます。
たとえば、スポーツジム付きのとあるマンション。ここのジムはスポーツジム運営会社と提携し、エクササイズメニューなどもあり、定期的にインストラクターが派遣されてくるという本格的なものでした。
しかし、デベロッパーが費用を負担する提携期間は最初の1年間だけ。それ以降は入居者が利用を継続するかどうかを決め、2年目からの費用は入居者全員で負担するというしくみになっていたのですが、マンションで何かを決める場合には入居者の過半数の票が必要になります。
このマンションの戸数を300戸と仮定しましょう。その場合、スポーツジムの利用を継続するためには過半数、つまり151世帯以上の賛成が求められるのです。果たしてそれだけの人が使っているかどうか。
もし、使っていたとしても2年目から別途スポーツジム提携費用を新たに徴収されることには抵抗を感じる人も少なくないでしょう。さらに使っていない人なら、怒りすら覚えても不思議ではありません。
ここでジムを使っている人、使っていない人、使っていても新たにお金を払いたくない人などと住民間に対立が生まれることは容易に想像できます。中には今後のお付き合いのことを考えて管理組合や他の住民に文句も言えず、もう管理には関わりたくないという人も出てくるでしょう。
チラシに書かれた、たった一行の文字の裏側を見過ごしたことで、入居したてのマンションがギスギスした人間関係に変わってしまうこともあるのです。こうなるともう、コミュニティは機能しなくなります。
管理組合は話し合いで物事を決める機関ですから、対立関係あり、無関心な人ありと、参加者が減っていくと建物価値の維持に必要な修繕計画が決議できなくなるなど、実際の生活に悪影響が出てくる可能性もあります。
「とりあえずあれば使うかなあ・・・」「あれば友達に自慢できるな」くらいの共用施設が住民間の亀裂の原因になるという思わぬ結果になってしまうことも十分考えられます。
なくても支障のない共有施設・・・購入の際は要検討
最新だったトレーニングマシンも古くもなれば入れ替えです。そんなこともあり、コスト面以外の問題でも、何年か経つと過剰な共用施設は使われなくなる傾向にあります。
敷地内の使いにくい場所にあったり、別棟になっていて雨の日には傘を差さなければ行けないような場所にあったりすると面倒ですし、初期のものめずらしさからの利用者は自然と減ってしまうのは当然です。
そうした、人が使用しなくなった過去の空間がマンション内にあることが物件の印象をどれだけ下げるか。資産価値を気にする人であれば、容易に想像できるはずです。
大規模物件の場合、通常よりも多くの戸数を売らなければなりませんから、その分、商品をできるだけ魅力的に見せなければなりません。そのため、他にない共用施設を売りにして、こんなに素敵です! とアピールするわけですが、最終的にはその費用は購入者に回ってきます。
冷静に考えれば、なくても生活に支障のない共用施設に惑わされて、住まい本体を見る目が曇らされることがないようにしたいものです。