マンションだけが住宅の選択肢ではないはずだが・・・
売るためには選択肢を絞り込むというセールステクニックが必要です。
よって営業マンは、マンションというジャンル内でのみ選択してもらえるよう、営業トークを展開します。そして、住宅全体や消費者ニーズそのものを見せないうちに営業を完了させるのです。住み心地が説明できない営業マンが増える背景には、このような点も挙げられます。
たとえば、同じエリア内に複数の物件を販売している会社が、見学客が悩んでいる時に比較例として自社物件を出すケースは多いでしょう。
マンション広告では、立地、広さ、価格、設備などの性能が語られ、賃貸との比較で分譲マンションのメリットは謳われますが、一戸建てや注文建築も含めた住宅全体で今、何が求められているのかについて語られることはまずないでしょう。
いずれの会社も、住宅全体の中からマンションを選ぶというのではなく、マンション業界の中で自社のマンションを選ばせるという選択肢を提示するのです。
しかし、住まいを選ぶということはイコールマンションを選ぶという意味ではありません。最終的にマンションを選択するにしても、最初はもっと広い目で住まいとはどんなものかということを捉えておく必要があるのです。
たとえば、『モダンリビング』や『ライヴズ』などといった注文建築で家を建てようと思う人が読む雑誌や、ハウスメーカーの家が立ち並ぶ住宅展示場を見てください。マンションの営業マンから聞く話とは違う、広い意味での住み心地という概念の存在に気が付くはずです。
まともな説明がない会社には疑問を持つべき
ここ数年、家を建てるとしたら、珪藻土や無垢の木材を使おう、健康によい素材を選ぼう、キッチンガーデンを作ろうといった、自然や環境に配慮した内装材やデザイン、ライフスタイルが主流になってきています。それはハウスメーカーのテレビCMを見ているだけでも、潮流を感じるはずです。
ところが、マンション業界には、このような動きはまったくと言っていいほど見られません。
自然や環境に配慮するといっても、IHやエコキュート、ソーラーパネル、LEDの導入、屋上緑化などにばかり力が入っており、生活環境を整え、室内を自然素材に替えるなどの住み心地には目が向かないケースが多いのです。
確かにマンションには一戸建てに比べて、法令上もさまざまな規制、制限があります。注文建築のように、施主の懐具合に合わせて作られる住宅とは異なり、ある一定の年収層の人が購入できる価格にしたいというデベロッパーの狙いもあります。
ですから、自然、健康志向というニーズですら水で薄めたような商品企画でいいか・・・ということになりがちなのでしょう。
その意味では、マンションという限られたジャンルの情報しか提供せず、住み心地も十分に説明してくれないにもかかわらず、「マンションだから、こんなものですよ」と諭すような発言をする営業マンがいる会社には、当然のことながら疑問を持つ必要があります。