日経平均株価は上げ幅を縮小する展開
4月7日の東京株式市場では、午前の日経平均株価は大幅続伸となっています。前日の米国株式市場では、新型コロナウイルス感染拡大の中心地となっているニューヨーク州の状況がピークに近いとの見方が報じられ、NYダウが過去3番目の上げ幅を記録する急騰となっており、これが好感されています。
新型コロナに関しては、ヨーロッパで感染拡大が緩やかになりつつあるとのニュースが、週末から連日で伝えられています。「外出自粛をしっかり守れば、感染拡大を食い止められる」として、日本でも7日(火)夕方に予定されている「緊急事態宣言」を機に自粛ムードがいっそう強まり、ひいては大都市圏を中心とした感染拡大を抑えられるといった期待が、市場関係者の間にあるようです。
この「緊急事態宣言」については、いつまでか、どこを対象にするのかといった話が数日前から「小出しに」報じられていますが、実際にどのような内容になるのかは、安倍首相の会見を聞かなければわかりません。
7日の日経平均株価は朝9時07分に19,162.52円の本日高値をつけましたが、前場のクローズにかけては上げ幅を縮小しました。19,000円台では戻り売りの圧力が強まりやすいといったこともあるのでしょうが、やはり、実際に宣言の中身をみなければ安心できないといった見方をするトレーダーは多く、ポジションを解消する動きが出ているものと考えられます。
楽観ムードは強いようですが、ひとまずは「緊急事態宣言」の見極めが必要と考える投資家は多いとみられます。
企業業績、日本経済がどうなるのか、やはり気になる
4月6日(月)の報道によると、海外のようなロックダウン(都市封鎖)は日本ではできないと首相が明言しています。従って、注意喚起のトーンが一段上がる程度との認識が、金融マーケットの関係者には多いとみられます。
とはいえ、企業業績がどうなるのか、日本経済はどうなるのか、気になるところです。
この点で注目されているのが、関西大学名誉教授の宮本勝浩氏が4月3日(金)に公表した『ロックダウンした時の経済的損失と影響』というレポートです。宮本勝浩氏は、2005年の『阪神優勝の経済効果』から始まって、『SMAP解散で失われる経済効果』や『GW10連休の経済効果』など、社会的に話題になっていることをもとに経済への影響を分析し、レポートにしています。メディアにもよく取り上げられます。
今回のレポートでは、本文のリード部分をそのまま転載すると「新型コロナウイルスの影響で、ロックダウンが実施された時の経済的損失について計算した結果、日本全体の損失額は2年間で約63兆円となりました。そのうち、東京・大阪・愛知における損失額は約20兆 1,000億円と試算しています」とあります。
これは2008年9月に発生した「リーマンショック」による当時の日本の経済的損失を参考にして、ロックダウンによる経済的損失を試算したそうです。約63兆円という数字は1964年の東京オリンピック開催の時の日本のGDP約30兆円の2倍に匹敵し、現在では、スウェーデンやベルギーの1年間のGDPとほぼ同額となります。
日本政府や地方自治体が「ロックダウン」をしなくても、実質的に「ロックダウン」となれば、数十兆円規模の経済的損失が発生することは避けられません。
4月7日の午前の東京株式市場は楽観的な見方が多いようですが、安倍首相の会見を経て、ムードが一変するリスクがある点には留意すべきでしょう。自分自身がどうみたかよりも、メディアの報じ方や、海外勢のとらえ方がどうなのかを、神経質にみていくことが重要です。
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