かなり悪かった米雇用統計だが…なぜ米ドル円は上昇したのか

新型コロナウイルスの影響がどう出るのか注目されていた3月分の米国雇用統計は、大幅な悪化となりました。そうであれば、為替相場では米ドルは急落しそうですが、むしろ週明けの東京市場では米ドル高・円安が進みました。影響が限定的となった理由を考えます。

米国の雇用統計で就業者の減少は9年半ぶり

注目されていた3月分の米国雇用統計が、4月3日(金)に発表されました。

 

結果は、景気動向を敏感に映す非農業部門の就業者数が前月比70万1,000人の減少(速報値、季節調整済み)と、10万人の減少という市場予想を大きく下振れました。就業者の減少は2010年9月以来、9年半ぶりです。

 

失業率は4.4%となり、前月から0.9ポイントも悪化しました。新型コロナウイルスの影響で雇用情勢は一段と悪くなっているため、現地のメディアでは、失業率は4~6月に10%を超えてくるとの見方を示しているようです。

 

米国雇用統計は市場予想を大きく下回り、雇用情勢の大幅悪化がうかがえる内容だった。
米国雇用統計は市場予想を大きく下回り、雇用情勢の大幅悪化がうかがえる内容だった。

 

雇用統計の調査対象期間は毎月12日が含まれる週の調査となっており、直近の感染拡大の状況はまだ反映されていないとみられています。3月中旬以降に雇用情勢がさらに悪化していることから、このように、失業率が10%を超えてくるとの見方を示しているのです。

 

日本経済新聞によれば、米国の金融大手ゴールドマン・サックスは4~6月期の経済成長率をマイナス34%(前期比年率換算)と予想しています。リーマン・ショック直後の08年10~12月期(8.4%減)の4倍もの急激な落ち込みになる見通しです。

 

一方で、ゴールドマンでは7~9月期に、成長率はプラス19%と急回復を見込んでいます。トランプ大統領も新型コロナウイルスの感染爆発が収まれば、6月には経済活動は元に戻るとの見方を示しています。V字回復となるかは、やはり、新型コロナウイルスの感染拡大を押さえられるか否かにかかっています。

原油価格が持ち直している背景にあるものとは?

このように、米国雇用統計は市場予想を大きく下回りましたが、米ドル円の値動きへの影響は限定的となりました。むしろ、週明けの東京市場では米ドル高・円安が進んでおり、109円台に乗せてきました。

 

これはどのように見ればよいのでしょうか。

 

米ドル円・日足チャート 【提供:楽天証券マーケットスピードⅡ】
米ドル円・日足チャート
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米国の雇用情勢が悪化し、米国政府が思い切った財政政策を行いやすくなったとの解説が聞かれますが、これも正しいと思います。

 

ただ、この話は3月の時点で「思惑」としてすでにあり、相場には相応に織り込まれています。

 

いちばん大きいのは、原油価格が持ち直してきていることではないでしょうか。

 

WTI原油(NY原油)は新型コロナウイルスの影響で世界的に経済が失速し、需要が急減するとの見方から、暴落しました。加えて、ロシアや中東各国など産油国の会合で減産の話し合いをしたものの、決裂したことが嫌気されて、一時は1バレル19ドル台まで弱含みました。

 

しかし、米国雇用統計の発表当日である3日(金)に、WTI原油は29ドル台まで値を戻しています。これが米ドル円の堅調な地合いの背景にあると考えられます。

 

WTI原油・日足チャート 【提供:楽天証券マーケットスピードⅡ】
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もともと、トランプ大統領は原油安に歯止めをかけるため、減産に合意してほしいと繰り返し、表明しています。市場関係者の中には、減産による原油価格の安定を期待する声は多いです。

 

複数の報道によれば、低迷する原油価格を引き上げるため、協調減産の再開に向けた産油国の緊急会合が9日(木)に開催される方向で調整が進められているようです。もし減産で合意となれば、新型コロナウイルスの騒動で混乱するマーケットに、一定の安心感を与えてくれるでしょう。

 

ただ、ロシアとサウジアラビアが前回協議の決裂の責任について、互いを非難する険悪な状態になっており、減産で合意できるかは不透明な状況です。会合が開催できれば、世界の原油供給量の約10%にあたる日量1,000万バレル程度の大規模な減産に向けた協議が行われる見通しです。

 

会合を開催できるか、そして合意できるかと、2つの高いハードルはありますが、うまくいけばWTI原油はリバウンドが見込めそうです。そうすれば、石油大手シェブロンなどの株価も持ち直し、米国株式市場でNYダウの上昇にもつながります。WTI原油はテクニカル的に「下がり過ぎ」や「売られ過ぎ」を示しており、その反動で大きな上昇があるかもしれません。

 

一方で、楽観論が広がっているだけに、再び決裂となれば、失望ムードがマーケットに一気に広がるリスクもあります。

 

この産油国の会合が、目先でのマーケットの注目材料として急浮上しています。

 

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