外食各社から3月分の月次(数値)が相次いで発表されています。2月分では、新型コロナウイルスの影響を分析するにはデータ不足の感がありましたが、業態別に優劣がみえてきました。各社の状況を考察します。

 

新型コロナウイルスの感染拡大により、外食産業に大きな影響が出ています。自粛ムードが広がってきた2月以降、店舗における飲食が控えられ、とりわけ居酒屋を中心に夜間の外食ニーズが減退していることは、各報道などで伝えられている通りです。

 

一方で、テイクアウトの需要は伸びており、さらに増えているのは宅配でしょう。東京や大阪などの都市圏では、「ウーバーイーツ」や「出前館」といったロゴ入りのバッグ(リュック)を背負った自転車、バイクによる配達員を多く見かけるようになりました。

 

今回は、外食事業を手がける上場企業の中から、4月1日以降に発表された月次データをピックアップし、注目度の高いものを考察してみます。

 

なお、下記のデータに関して、増減はいずれも前年同月比です。

ファミレス業態は厳しい事業環境

●すかいらーく(ガストなど)
3月:既存店売上高23.9%減、全店売上高22.2%減
2月:既存店売上高0.4%減、全店売上高1.8%増
1月:既存店売上高2.4%減、全店売上高0.0%

 

●サイゼリヤ
3月:既存店売上高21.5%減、全店売上高21.6%減
2月:既存店売上高6.6%増、全店売上高6.4%増
1月:既存店売上高5.1%増、全店売上高5.0%増

 

まずは、ファミリーレストラン業態の2社についてです。ご覧のように、2社ともに3月になって事業環境が大きく悪化している状況がうかがえます。

 

もちろん、来店客の中には1人でモーニングを食べたり、パスタを夕食にとる人もいるでしょう。しかし、多くの顧客は複数で来店し、4~6人のボックス席で食事をしながら会話を楽しむといった感じです。

 

この点で、小池東京都知事らが繰り返し述べている、「密閉」、「密集」、「密接」の「三密」に合致しており、敬遠されているのかもしれません。

 

ファミレス業態は新型コロナの影響で、売り上げを大きく落としている。
ファミレス業態は新型コロナの影響で、売り上げを大きく落としている。

 

●リンガーハット
3月:純既存店売上高25.2%減、全店売上高23.7%減
2月:純既存店売上高2.5%減、全店売上高0.5%減
1月:純既存店売上高1.9%減、全店売上高0.9%増

 

3月になって月次データが大きく悪化している企業として、リンガーハットも挙げられます。こちらは業態として「ファミレス」には入りませんが、どちらかと言えば、顧客層はファミリーが多いのかもしれません。

 

イオンモールなどのフードコートなどに多く出店していますが、このフードコートは不特定多数の人が入れ替わり、立ち替わり利用する場所で、感染リスクがあると指摘されています。よって、敬遠されているのかもしれません。

1人客をターゲットにしているところは堅調

続いて、伸びているところをみてみます。

 

●トリドール(丸亀製麺)
3月:全業態既存店売上高6.4%増、全店売上高12.5%増、

丸亀製麺 既存店売上高8.1%増

2月:全業態既存店売上高8.9%増、全店売上高15.0%増、

丸亀製麺 既存店売上高10.0%増

1月:全業態既存店売上高15.3%減、全店売上高9.9%減、

丸亀製麺 既存店売上高13.5%減

 

●王将フードサービス(餃子の王将)
3月:直営既存店売上高9.9%増、直営全店売上高10.3%増
2月:直営既存店売上高11.3%増、直営全店売上高11.6%増
1月:直営既存店売上高3.5%減、直営全店売上高3.5%減

 

トリドールは居酒屋業態も行っていますが、丸亀製麺の好調が全体を引っ張っているようです。

 

また、餃子の王将については、夜にビールを飲みながら餃子をつまみに…というイメージがあり、一見すると事業環境は厳しいように思えます。しかし、3月は堅調でした。

 

丸亀製麺は「1人で来店して、パッと食べられる」ため、いわゆる「三密」には合致しません。餃子の王将はカウンター席で食事をしながら、1人でアルコールを楽しむタイプであり、やはり「三密」には合致しません。加えて、テイクアウトも展開しており、売り上げに貢献していると推察できます。

牛丼各社は健闘している

次に、牛丼チェーンを展開する2社をみてみます。

 

●吉野家
3月:既存店売上高1.8%減、全店売上高0.0%
2月:既存店売上高2.1%減、全店売上高0.1%増
1月:既存店売上高9.5%増、全店売上高11.7%増
※2月の既存店売上高の前年未達は2018年・2019年2月に2年連続で実施した大型キャンペーンの反動

 

●松屋フーズ
3月:既存店売上高6.4%増、全店売上高8.0%増
2月:既存店売上高15.5%増、全店売上高17.7%増
1月:既存店売上高5.3%減、全店売上高4.0%減

 

3月については増減がマチマチとなっていますが、マイナスとなった吉野家でも既存店売上高は1.8%の減少にとどまっており、健闘していると考えてよいと思います。

 

この業態はこのところ、スマートフォンのアプリを活用したクーポンの配布や、PayPayなど決裁アプリを使ったキャンペーンを頻発しており、そのたびに数値が大きく振れて「ノイズ」が入っているため、判断しにくいというのが正直なところです。

マクドナルドの既存店上振れは止まったが…

●マクドナルド
3月:既存店売上高0.1%減、全店売上高0.5%増
2月:既存店売上高14.7%増、全店売上高15.4%増
1月:既存店売上高2.6%増、全店売上高3.2%増

 

最後に外食の雄、マクドナルドもみてみます。3月の既存店売上高は0.1%減となり、月次の既存店売上高が前年を上回るのは51カ月連続で止まってしまいました。

 

業界や金融マーケットの関係者の間では、既存店売上高の上振れがいつ止まるのかが注目されていました。それが大幅な下振れとでもなれば、業績見通しにマイナスの影響があると懸念されていました。

 

今回、52カ月ぶりのマイナスになりましたが、(1)下振れが小幅だったこと、そして何よりも(2)商品性の問題や不祥事ではなく、新型コロナの影響と判断され、負のイメージは極めて限定的となりました。

 

新型コロナの問題が出てから、テイクアウトの需要が伸びている。
新型コロナの問題が出てから、テイクアウトの需要が伸びている。

 

以上から、ファミレス業態を中心に、テーブル席で複数(大人数)の顧客を想定した業態は厳しいようです。

 

逆に、カウンター席が中心で1人客を想定した業態や、テイクアウトを展開しているところは、事業環境が良好であったり、新型コロナの影響を緩和できているようです。

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、著者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

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