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最近のソブリン(中央政府)格付けの動向を振り返ると、格下げが多く見られます。格下げ理由から主な特色を拾い出すと、原油価格下落による産油国の格下げが多くなっています。その他には、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた経済への影響による財政悪化への懸念、政治の不安定さなどが主な要因です。
ソブリン格付け:最近の格付けの動向を見ると格下げ一色となっている
格付け会社フィッチ・レーティングス(フィッチ)は2020年4月1日、産油国コロンビアの長期債格付け(自国通貨建て、外貨建て共に)をBBBからBBB-に格下げしました。また、同日にS&Pグローバル・レーティング(S&P)は、同じ南米で産油国でもあるスリナムの長期債格付け(自国通貨建て、外貨建て共に)をBからCCC+に格下げしました。
この1ヵ月程(3月月初来)のソブリン格付け動向を、先のフィッチ、S&Pとムーディーズ・インベスターズ・サービス(ムーディーズ)について振り返ると16の国が格付け変更され、その全てが格下げでした(図表参照)。
どこに注目すべきか:ソブリン格付け、産油国、格下げ、財政政策
最近のソブリン(中央政府)格付けの動向を振り返ると、格下げが多く見られます。格下げ理由から主な特色を拾い出すと、原油価格下落による産油国の格下げが多くなっています。その他には、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた経済への影響による財政悪化への懸念、政治の不安定さなどが主な要因です。
まず、原油価格の下落を主な背景として格下げされた国としては、エクアドル、アンゴラ、スリナム、ナイジェリア、オマーン、トリニダード・トバゴ、コロンビア、クウェートなどがあげられます。この背景に、格付け会社が想定原油価格を引き下げたことです。例えば、S&Pはブレント原油価格の想定価格を従来は20年平均が60ドル/バレル、21年は55ドル/バレルとしていました。しかし、S&Pは現在では20年を30ドル/バレル、21年を50ドル/バレルと引き下げています。産油国は歳入の多くを石油に依存しています。例えばオマーンは歳入の約75%が石油関連と格付け会社は指摘しています。
原油価格の足元の急落前から財政が悪化している国もあります。例えば、4月末期限の利子返済を遅らせる可能性を示唆したエクアドルや、債務残高対GDP(国内総生産)比率が19年に100%を超えたと見られるアンゴラなどです。
さらに、政治問題が格下げの要因に加わった産油国もあります。例えば、スリナムは昨年11月に大統領に禁固20年の有罪判決(逮捕命令は出ていない模様)により、今年5月に予定される選挙では、与党が過半数を維持する可能性が低下したため有効な財政改革が打ち出せない懸念があります。
一方、産油国の多くが保有するソブリン・ウェルス・ファンド(SWF)が財政を支援するのはプラス材料です。例えば、クウェートは最近S&PからAA-に格下げされたとはいえ、高水準の格付けを維持しています。ただ、SWFの情報開示が限定的であることに注意は必要です。あくまで参考ですが、比較的オープンなノルウェーのSWFは20年1-3月期マイナス約15%と記録的な損失を計上しているケースもあります。
産油国以外では南アフリカと英国に注目しました。南アは唯一投資適格(BBB格以上)としていたムーディーズが最近Ba1(BB+に相当)に格下げしたため投資不適格となりました。債券インデックスから除外される運びで、通貨ランド安傾向が続いています。しかもムーディーズは南アの見通しを弱含み(ネガティブ)としており、中長期的にさらなる格下げの可能性も視野に入れています。南アのラマポーザ政権は必死に改革に着手していますが、難問山積みです。
英国については、フィッチがAA-に格下げしました。新型コロナウイルスの感染拡大による景気悪化への対応で財政拡大が懸念されると説明しています。同じ欧州には、イタリアなど英国より財政が心配な国もありますが、ユーロ圏の財政協調の動きは緩慢に見えます。むしろ、このことが心配です。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『最近の格付け動向は格下げ一色』を参照)。
(2020年4月3日)
梅澤 利文
ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト
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