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3月の米雇用統計で、悪化が予想されていた非農業部門雇用者数は市場予想をさらに大幅に下回りました。外食や宿泊等を含むレジャー(娯楽)セクターは市場の想定より早く、雇用を減らしていたのだろうと思われます。今後他のセクターにも雇用調整の広がりが想定されることから、さらなる雇用者の減少、失業率の上昇が見込まれます。
米雇用統計:雇用市場にも新型コロナウイルスの影響、市場予想よりも悪化
米労働省が2020年4月3日に公表した3月の雇用統計で、非農業部門雇用者数(事業所調査)は前月比マイナス70.1万人と、市場予想(マイナス10.0万人)、前月(プラス27.5万人)を大幅に下回りました(図表1参照)。家計調査に基づく失業率は4.4%と、市場予想(3.8%)、前月(3.5%)を上回り、雇用の悪化が示されました。
どこに注目すべきか:非農業部門雇用者数、セクター、失業率
3月の米雇用統計で、悪化が予想されていた非農業部門雇用者数は市場予想をさらに大幅に下回りました。外食や宿泊等を含むレジャー(娯楽)セクターは市場の想定より早く、雇用を減らしていたのだろうと思われます。今後他のセクターにも雇用調整の広がりが想定されることから、さらなる雇用者の減少、失業率の上昇が見込まれます。
まず、非農業部門雇用者数のポイントを3点述べます。
1点目は今回の雇用者の減少は歴史的な出来事だということです。第2次大戦後、同指数が前月比マイナス50万人を超えたのは、戦後の混乱期と、オイルショック後、リーマンショック後と数えるほどしかありません。また、リーマンショックのときと比べて雇用者の減少スピードは急激です(図表1参照)。前例がない局面と言えそうです。
2点目は、想定より早い雇用の減少です。事業所調査である雇用者数の調査対象期間は毎月12日を含む賃金支払期間です。米国が新型コロナウイルス対策として移動などの制限を強めたのは3月後半であったため、非農業部門雇用者数の大幅減は4月のデータに強く反映されると見ていましたが、企業の対応が想定より早かった模様です。
最後に、どのセクターが雇用者を減らしたかを確認すると娯楽セクターが45.9万人減と、全体の約3分の2となっています。娯楽セクターの内訳は、宿泊と外食の合計が44.6万人と大半で、娯楽セクターはその他に芸術関連、アミューズメントなどを含みます。なお、娯楽セクター以外でも、製造業や建設を含む財生産、小売、運輸、ヘルスケア、さらに雇用者数に先行する傾向がある派遣サービスも減少しています。
ただ、減少の程度は娯楽セクターほどではなかった面も見られます。しかしながら、3月後半だけで新規失業保険申請件数が1,000万人程度増えたことを考えれば、来月は娯楽以外のセクターでも雇用減少の動きが広がるものと見ています。
次に、失業率です。4.4%と、市場予想を上回る悪化となりました。家計調査に基づく雇用者数が想定よりも減少したためです。米国の3月の労働力人口は約1億6,300万人、失業者が約714万人となっています。新規失業保険申請件数の動向から、失業者は今週発表の予想を含めると1,500万人程度上乗せが想定されます。また、労働参加率が低下したことから雇用市場から除外された人の増加も懸念されます。結果、失業率は10%を超える可能性が高まったと見ています。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米雇用統計、市場予想を下回るも、最悪はまだ先』を参照)。
(2020年4月6日)
梅澤 利文
ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト
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