熟年離婚に踏み切る女性の心境とは?
私の身の回りにも熟年離婚者がおられます。
現在63歳の奈津子さん(仮名)は、24歳のとき、勤めていた食品開発部門の7歳年上の上司と職場結婚しました。出産と育児のため半年ほどの休職を挟んで実質25年間、フルタイム勤務で夫婦共働きをしてきました。
奈津子さんのご両親の資金援助を受けて一戸建ての自宅を購入し、育児でも相当なサポートをご両親に依存してきたのです。一人娘の結婚と孫の誕生を機に仕事を辞めましたが、この頃から「別れよう」と思うようになったといいます。
元夫は真面目で仕事一筋で生きてきました。異性問題で困ったことはありません。しかし、夫婦に会話がなかったのです。休みに夫婦で外出することはほとんどなく、家事・育児を含め身の回りのこと全てを奈津子さんに任せきりでした。
「まるで家政婦でした」と彼女が言います。
「一番は、私が口答えをすること許さず、黙って指示に従わせようとする態度だったと思います。私が口答えしようとしたり、家の中が整理整頓されていなかったりすると、激怒していました。次第に物を投げつけたり、暴力を振るうようになったりもしたのです。それに私が仕事を辞めてからは、要求しない限り、お金を家計に入れてくれませんでした。」
医療業務関連のパートタイム業務に就きながら勉強を続け、医療業務管理士の資格を得て、医療機関に正社員として採用されたのです。そして奈津子さん59歳(元夫66歳)、結婚生活35年になったとき、離婚が成立しました。
「離婚直後は、長かった結婚生活を振り返っては寂しい気持ちになり、自然と涙がこみあげてくることもありました。夫に相談もせず、実の両親にばかり依存してきた私も悪かったのです。当初は、確かに離婚という束縛からの解放感より悲しさの方がまさっていたのです。しかし、今は心身ともに充実して全く後悔していません」
もちろん、離婚は夫婦間の微妙で複雑な問題です。単一な理由よりも複数の不満が原因であることが一般的で、男女双方にさまざまな誘因があってのことです。ただし当事者本人にも明確な理由がわからないこともあります。
▼離婚理由
熟年離婚の原因に触れる前に、ここで離婚全般の理由について少し言及しておきます。
2016年の婚姻件数約62万件、離婚件数が約22万件(厚生労働省)で、俗に「3組に1組」の夫婦が離婚していると表現されています。正確にはその年に結婚した夫婦の数に対して約3割に相当するその他の夫婦が離婚していることになります。
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その離婚理由でよく使われるランキングが、裁判所が公表しているものです。これらは、夫婦間の話し合いだけでは成立しなかった離婚を裁判所に申し立てた際の離婚理由です。ほとんどに複合した離婚理由があり、それぞれの申し立てで3つ理由をあげた項目を集計しています。ここでも女性からの申し立て件数が男性の2.6倍多くあります。
この中で最も多い理由が「性格の不一致」です。
もとより生まれも育ちも違う男女が一緒に暮らすのですから、価値観や性格の違いで衝突するのは当然です。離婚が成立するのは、たとえば“嫉妬深い”、“過度の干渉・プライバシーの侵害”などのために、外出ができなかったり、喧嘩が絶えなかったりする場合です。
その他、「浮気」「暴力・虐待(身体的・精神的)」「親族問題(親族との不仲・親の介護問題)」「金銭的トラブル(浪費ぐせ・ギャンブル)」「身体関係の問題(身体交渉なし・異常な欲求)」「家庭の放棄(同居放棄・生活費渡さず)」などが離婚理由にあがっています。
また、単に「酒を飲み過ぎる」もありますが、過度の飲酒のために喧嘩、暴力、金銭トラブル、家庭の放棄などにおよぶ場合が離婚理由として成立します。
やはり、夫婦関係が破たんするほどの相当な問題が離婚に至るのですが、それぞれの理由のいわば初期段階のような問題は、夫婦生活において日常的に起こっていると言えます。
性格の不一致、喧嘩、酒を飲み過ぎるだけでなく、身体関係の問題や一時的に家庭を省みなかったり、親族と仲が悪かったりした場合などです。
清水 一郎
おひさまクリニックセンター北 院長