2019年は「3組に1組」の夫婦が離婚…原因は?
2019年の婚姻件数は約58万件、離婚件数は約21万件(厚生労働省)で、「3組に1組」の夫婦が離婚していると表現されています。正確には、その年に結婚した夫婦の数に対して約3割に相当するその他の夫婦が離婚していることになります。
裁判所が、夫婦間の話し合いだけで解決せず、裁判所に離婚を申し立てた際の離婚理由を、主なもの3つを挙げる方法で調査・集計しています。(参照:平成29年 司法統計19 婚姻関係事件数 申立ての動機別申立人別 全家庭裁判所 )ここでも女性からの申し立て件数は男性の2.6倍多くあります。この中で最も多い理由が「性格の不一致」です。
もとより生まれも育ちも違う男女が一緒に暮らすのですから、価値観や性格の違いで衝突するのは当然です。離婚が成立するのは、たとえば“嫉妬深い”、“過度の干渉・プライバシーの侵害”などのために、外出ができなかったり、喧嘩が絶えなかったりする場合です。
その他、「浮気」「暴力・虐待(身体的・精神的)」「親族問題(親族との不仲・親の介護問題)」「金銭的トラブル(浪費ぐせ・ギャンブル)」「身体関係の問題(身体交渉なし・異常な欲求)」「家庭の放棄(同居放棄・生活費渡さず)」などが離婚理由にあがっています。
また、単に「酒を飲み過ぎる」もありますが、過度の飲酒のために喧嘩、暴力、金銭トラブル、家庭の放棄などにおよぶ場合が離婚理由として成立します。
やはり、夫婦関係が破たんするほどの相当な問題が離婚に至るのですが、それぞれの理由のいわば初期段階のような問題は、夫婦生活において日常的に起こっていると言えます。
性格の不一致、喧嘩、酒を飲み過ぎるだけでなく、身体関係の問題や一時的に家庭を省みなかったり、親族と仲が悪かったりした場合などです。
1千人以上の対象者に「夫婦関係」について聞いてみた
結局は、長年にわたる複数の不満が積もり積もって、「離婚」という決壊点に達するのだと考えられます。そこで、離婚原因の前段階となる、夫婦関係の満足度に関するデータを確認してみます。[図表]は1千人以上の対象者に実施した、夫婦関係の満足度に関する複数の調査結果です。
(1)では、満足度を下げる項目として、「気が利かない」「整理整頓ができない」や「家事を分担しない」「料理の手抜き」「話を聞いてくれない」などが上位にあがっています。
裁判所の離婚理由のトップ10にも登場している「酒を飲み過ぎる」など、生活習慣で困っている場合や、「イビキがひどい」「体型が変わってきたところ」などの解消しにくい身体的不満もありますが、不満の原因は、広い意味での夫婦間のコミュニケーション(会話、交流、通信など)不足と、整理整頓も含めた炊事・掃除・洗濯などの家事全般に関する双方の不満に集約できそうです。
そして(2)では、夫婦関係を今より良くする項目として、「収入の増加」以上に、「配偶者とのコミュニケーション」や「夫婦二人の時間」が上位にあがり、さらに「感謝や労い」の言葉を自分からパートナーに言ったり、パートナーから自分に言ってもらったりすることがとても重要だとしています。夫婦間のコミュニケーションがどれほど大切なものなのか、あらためて確認できます。
「コミュニケーション」を増やせば離婚を回避できる?
さらに(3)を見てください。妻の不満を引き起こす理由として、「夫婦共有の主要な生活活動の減少」「夫婦共有の休日の生活時間の減少」「平均会話時間の減少」が上位にあがります。ここでいう夫婦共有の主要な生活活動とは、平日の「食事」や「くつろぎ」、休日の「くつろぎ」、「家事・育児」「スポーツ・娯楽・趣味」のことで、休日の生活時間とは、休日の「くつろぎ」、「家事・育児」「スポーツ・娯楽・趣味」に費やした合計時間を意味します。以上は食事などの夫婦共有の活動も含めた、夫婦間のコミュニケーションと夫婦の家事・育児分担の問題に深く根ざしています。
そして、熟年離婚の増加と関係しているのが、第2位にランクされた「結婚年数の増加」に伴う満足度の低下です。結婚当初の夫婦愛が、次第に薄れていくことや、パートナーへの細かな不満の蓄積などにより、時間の経過とともに壊れやすくなることが原因です。さらに、子育ての終了や定年退職などを契機に、夫婦愛は容易に崩壊するかもしれません。
しかし、夫婦共有の「食事」「くつろぎ」「家事・育児」などの活動項目数や時間、そして会話時間が増えれば結婚年数の増加による不満を緩和することが可能です。要するに、夫婦間のコミュニケーションや夫の家事・育児分担が増えれば、妻の「下がり続ける満足度」をくい止めることだってできるのです。
また「夫の育児分担」が少ないと、「最初の子どもの誕生」において妻の不満が大きくなります。妻にとっては初めての育児経験で、予想もつかない不安と混乱の時期に、夫からのサポートが期待できなかった場合、強いインパクトを残すのも当然です。逆に夫の育児分担が増えれば、「最初の子ども誕生」における不満度の緩和が可能です。
「夫の失業」「世帯の預貯金・有価証券額の減少」「夫の収入の減少」といった経済的問題が妻の不満を引き出すのはしかたないことです。しかし、妻も仕事をしている家庭の場合、必ずしも離婚につながらないことは多くの調査でわかっています。そこに夫婦共有の生活活動や会話時間が十分あれば、経済的不満を和らげて、妻の満足度の上昇が期待できるからです。
夫婦愛とは、夫婦関係の満足感や信頼感を根幹としています。夫婦関係の「満足感」調査同様に行われた「信頼感」に関する調査の結果を見ると、妻の信頼感に負の影響を与える項目として、「夫の失業」や「夫の収入の減少」などの経済的問題が上位にあがっています。しかし先述したように、仕事を持つ妻にとっては離婚のリスクを高めるほどにはなりません。
信頼度も満足度と同じく、夫婦共有の生活活動や会話時間、夫の家事・育児分担が増えれば、信頼度が高まります。その夫婦愛の崩壊を押しとどめているものがあるとすれば、夫にとっても、妻にとっても、子どもの成長だったり、自らの離婚後の寂しさや、健康不安や生活不安だったりするものです。