アメリカのトップ大学に入学するには厳しい選抜を経なければなりませんが、そこで注目を集めているのがジュニア・ボーディングスクールです。ジュニア・ボーディングスクールはトップレベルのセカンダリースクールへの登竜門でもあり、10代前半のうちに、子どもを留学させるケースが増えているようです。高い学力に加えて、将来にわたって役立つリーダーシップを身に着けられるなど魅力は多く、それらの経験すべてが大学受験につながると、高い意識を持つ生徒や親に定評があります。本記事では、SAPIX YOZEMI GROUPの海外事業開発部長・髙宮信乃氏が、その実情について解説します。

倍率20倍超のアメリカ名門大学への登竜門

近年、アメリカやスイス、イギリスなどで寮のある学校に、子どもを10代前半から留学させるケースが増えつつあるようです。その中でも、アメリカのジュニア・ボーディングスクールが選ばれる理由とは、なんでしょうか?

 

アメリカのジュニア・ボーディングスクールは、名門10校"Ten Schools"をはじめとするトップレベルのセカンダリースクールへの登竜門と位置付けられ、アイビーリーグなどの名門大学を目指す生徒・家族を惹きつけています。

 

アメリカのトップ大学の入学者選抜は熾烈を極めています。例えば2019年度の合格率は、ハーバード大学(Harvard University)が4.6%、スタンフォード大学(Stanford University)が4.2%でした。倍率20倍を超える狭き門を突破するには、成績が優秀なだけでは不十分です。

 

大学が求めているのは、学力に加えて、"Independency"(独立心・自主性)、"Self-Advocacy"(自らの意見や感情を言動に移し、自己表現をすること)、"Confidence"(自信)というのが、進学カウンセラーの共通認識です。早い時期からこれらの非認知能力を磨けることが、ジュニア・ボーディングスクールの魅力です。

小3生から留学生を受け入れるスクールもある

ジュニア・ボーディングスクールは、何歳から留学生を受け入れているのでしょうか?

 

11校のうち最も低年齢で寮生を受け入れているのが、マサチューセッツ州にある共学校・ベメントスクール(The Bement School)です。The Ten Schoolsの1校、ディアフィールド・アカデミー(Deerfield Academy)からほど近い場所にあるこの学校では、小3生からのボーディング・プログラムを提供しています。

 

次いで、小4生から受け入れを開始するのが、マサチューセッツ州の男子校・ヒルサイドスクール(Hillside School)とニューヨーク州の共学校・ノースカントリー・スクール(North Country School)です。

 

これらの学校では、親元を離れ、単身で入学した生徒にとっての第2のファミリーになることを重要視しています。ヒルサイドスクールやノースカントリー・スクールを例に挙げると、校内にある牧場や農園で動物や野菜を育て、自らに与えられた役割を果たし、学校というコミュニティに貢献することで、生徒は所属意識を自然に高めていきます。

 

寮生の人数や比率は異なるものの、11校のジュニア・ボーディングスクールは、基本的にアメリカ人の通学生と世界中から集まる留学生によって構成されています。その中で、低学年では異なる価値観やバックグラウンドを持つ生徒達と学校生活・寮生活を過ごすことで、他者への尊敬や共感を育むよう奨励され、学年が上がるとビッグブラザー・シスターとしての役割を担いながらリーダーシップを身に着けていきます。
 

寮に掲示されたスケジュールや役割分担表などにより、共同生活の中での自分の責任と役割を確認できる(The Hillside School)
寮に掲示されたスケジュールや役割分担表などにより、共同生活の中での自分の責任と役割を確認できる(The Hillside School)

専任のカウンセラーが高校進学をサポート

寮生の受け入れ開始時期は学校によってさまざまですが、最終学年は共通して9年生(中3生)であり、通学生は8年生(中2生)で、寮生は9年生(中3生)で、全員がセカンダリースクールを受験します。

 

在校生をよりレベルの高いセカンダリースクールに進学させることは、すべてのジュニア・ボーディングスクールの使命です。そのために、学校内にはセカンダリースクール・カウンセリング・オフィスが設置され、専任のカウンセラーが常駐しています。

 

専任カウンセラーは、セカンダリースクールの進学指導の専門家です。北米には約350校のボーディングスクールがあり、その中でお子様にとってBest Fitな学校を選ぶことは、セカンダリースクールでの成功の生命線です。

 

専任カウンセラーは定期的にセカンダリースクールを訪問して、情報収集と関係構築に日々努めています。

 

その知識とネットワークを最大限いかし、生徒や保護者、学校内のアドバイザーや教師、コーチと連携しながら、生徒の強みや能力、必要なサポートやチャレンジを見極めつつ、出願校を提案します。生徒自身も主体的に学校リサーチを行い、また、学校で開催されるセカンダリースクールを招いての説明会の機会などを利用しながら、志望校を絞っていきます。

セカンダリースクール・カウンセリング・オフィスには進学先のペナントフラッグが掲示される(The Fessenden School)
セカンダリースクール・カウンセリング・オフィスには進学先のペナントフラッグが掲示される(The Fessenden School)

高校受験で経験するすべてが大学受験につながる

セカンダリースクール受験は、大学受験とほぼ同じプロセスが求められます。具体的には、しっかりとした自己分析を行った上で書き上げるエッセイや、出願する学校を訪問してのインタビュー、SSATや留学生の場合にはTOEFL iBT®といった試験スコアの準備など、決められた期日までにより精度の高いエビデンスをそろえる必要があります。

 

また、学校での成績も送られますので、日々の授業も気を抜けません。多くのジュニア・ボーディングスクールが学期の中間・期末レポートに加え、学習の進ちょくを示すプログレスレコードを頻繁に発行するのは、受験を意識して問題点や課題を認識し、早期に解決できるよう配慮してのことです。

 

寮生の場合、9年生(中3生)のほぼ全員が受験をするため、出願締切が近づく11~12月は、SSATやTOEFL iBT®といった試験のスコアや日々の成績に一喜一憂する日々が続きます。

 

その中で感じるプレッシャーやストレスは相当なものですが、セカンダリースクールよりもきめ細やかなサポートを学校から受けられます。このような経験を経て、志望校への切符を得ることで、ストレスマネジメントやタイムマネジメントといったスキルを自然に身に着けられます。

 

そして3年後には、セカンダリースクール受験での経験をもとに、志望大学への合格を目指せるのです。

 

全米で11校存在するジュニア・ボーディングスクールのうち、共学校が7校、男子校が4校です。数少ないジュニア・ボーディングスクールであっても、お子様にとってBest Fitな学校に出会うことは、その後のセカンダリースクール受験に大きくかかわります。

 

男子校か共学か、立地、学校の規模、寮生の割合やサポートの内容など、一つひとつの項目をお子様の個性に照らし合わせながら学校を選択していくことが求められます。

 

SAPIX YOZEMI GROUP 海外事業開発部長

Triple Alpha 副会長

髙宮 信乃

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